皆さんこんにちは。
本記事では絶対に知っておきたい「デジタル終活の遺品整理」について実際の体験談をもとに解説をしていきます。
- 単身・独身で生活しているが「デジタル終活」と聞いて何をすることか頭にすぐ浮かばない方
- スマホやnetflix、アマゾンプライムといったサブスクを最後にどうするか決めていない人
- デジタル終活と聞いて準備が100%できていると言い切れない人
遺品整理で見落とされがちな「デジタル終活」とは
遺品整理というと、多くの方がまず思い浮かべるのは、家具や衣類、アルバムなどの「目に見える遺品」ではないでしょうか。しかし、現代においてはもうひとつ、見落とされやすい重要な領域があります。それが「スマホやパソコンを通じて日々蓄積された個人データ」、つまりデジタル情報の整理です。
こうした“デジタルな遺品”は、見た目には何も残っていないように感じられますが、実際には故人の人生やお金に関わる多くの情報が詰まっている可能性があります。
SNSやネット銀行、ネットショッピング、サブスクリプションサービスの利用履歴まで、気づかないうちにさまざまな形で記録が残っています。
ところがこの「デジタル遺品」は、端末のロックやパスワードなどによって、残されたご家族が手を付けられず、困惑してしまうケースも少なくありません。だからこそ、事前に「デジタル終活」の視点からも準備を進めておくことが、現代の遺品整理には不可欠になりつつあります。
ここでは、遺品整理の現場で見落とされやすい「デジタル終活」に焦点を当て、その背景やリスク、事前に備える意義について、具体的に掘り下げていきます。
スマホやPCは“遺品”になる時代
一昔前まで、遺品といえばタンスや仏壇、アルバム、日記帳といった「物理的なもの」が中心でした。しかし、スマホやパソコンの普及によって、いまやそれらも立派な「遺品」として扱われるようになっています。
たとえばスマートフォンの中には、故人の交友関係や仕事の履歴、思い出の写真、さらには金融機関のアプリや電子マネーの情報まで、多岐にわたる個人情報が保存されています。パソコンであれば、ネット証券の口座情報や税金・年金に関する書類、さらには自作のデータや文書なども含まれていることがあります。
こうした情報は、一見すると“画面の中”にしか存在しないため、故人がどれだけのデジタル情報を残していたのか、ご家族がすぐに把握するのは困難です。しかも、指紋認証や顔認証、複雑なパスワードロックが施されていることが多く、端末にすらアクセスできないケースも多く見受けられます。
総務省の調査によれば、スマートフォンの個人所有率は60代でも80%を超えており、70代でもおよそ半数以上が保有しています。つまり「高齢だからスマホを使っていない」という時代はすでに過去のものであり、誰もが何らかの形で“デジタルな遺品”を残す可能性がある時代に突入していると言えます。
このような背景から、「デジタル終活」は、もはや特別な人のためのものではなく、誰にとっても身近な備えとして意識され始めています。
家族を悩ませる“見えない遺品”とは
遺品整理を進める中で、目に見えるモノは比較的整理がしやすい反面、最も手間取るのが「何があるかわからない」「見つけようがない」といった“見えない遺品”の存在です。これは、具体的にはデジタル遺産(パソコンやスマホ内のデータ、クラウド保存された情報、SNSのアカウントなど)を指しています。
故人が使っていたスマホにロックがかかっていて中身が見られない、パソコンを開いても何のデータがどこにあるのか全くわからない、という場面は、遺族の間でもしばしば混乱を招きます。しかも「これを勝手に開いていいのか」「知らない内容が見えてしまうのでは」と心理的なブレーキも働き、手がつけられずに時間が経ってしまうケースもあります。
そして近年では仮想通貨やNFTなどのアカウントがないとわからない資産についてもトラブルが増加しています。残された家族はどんなデジタル資産をどの証券口座や仮想通貨の取引所(交換所)でもっているか、スマホを確認しても見えづらいからです。
また、故人の銀行口座に関わる通知がメールのみで届いていたり、定期的に支払っていたサービスが自動引き落としになっていたりすると、発見が遅れることで無駄な出費が続いてしまうこともあります。なかにはSNSに残されたアカウントが悪用され、乗っ取りやスパムの発信源になるといった事例も報告されています。
これらの多くの問題は「デジタル終活」が生前に行われていれば、防げる可能性が高いです。
だからこそ、遺品整理を円滑に進めるうえでも、見えない遺品への備えが重要だとされています。目には見えないけれど確実に存在する「デジタルの痕跡」は、遺された方にとっても大きな意味を持つことを、忘れないようにしておきたいところです。
「デジタル終活」を怠ると起こるトラブル
「デジタル終活なんて、自分にはまだ早い」「そんなに重要だとは思わなかった」といった声は少なくありませんし65歳で定年を迎える方でも現在はとても元気な方が多いので、終活を始めるきっかけづくりができない人が多いようです。
しかし、これを後回しにしたことで、思わぬトラブルに発展するケースも増えてきています。
たとえば、パソコンの中に保管されていた不動産関連のデータが見つからず、相続手続きに時間と費用が余計にかかったケースや、インターネットバンキングの情報が誰にも共有されておらず、何ヶ月も預金が宙に浮いていたというケースもあります。
また、SNSアカウントが放置されたままになり、知人から「なぜメッセージを送っても返事がないのか」と心配されたり、故人のSNSアカウントを乗っ取りなりすましの被害も出ています。
こうしたトラブルはご家族や身近な方にとって大きな負担となりますが、実は多くが「少しの準備」で防げるとされています。パスワードの一覧を紙で保管する、信頼できる人に「ここに情報がある」と伝えておく、それだけでも状況は大きく変わってきます。
つまり、「デジタル終活」を行うことで、遺品整理の際に起こりうる問題をあらかじめ回避することができるし、残された家族への配慮にもつながります。生前のうちにできる、小さくても大切な備えとして、改めて見直す価値があるのではないでしょうか。
遺品整理でデジタル終活を忘れないための準備と注意点
遺品整理をスムーズに進めるためには、事前の準備が非常に重要です。特にデジタル終活に関しては見落としやすく、かつ情報の所在や種類が多岐にわたるため「かなり大変」という声も多いです。(その大変さも「何からどう進めていいかわからない」という声が多いので、今からその手順について解説をします)
紙の書類とは異なり、デジタル情報は目に見えず、物理的な場所にも存在しないため、どこから手を付けるべきか迷ってしまう方も多いからではないでしょうか。
加えて、暗号資産(仮想通貨)やNFTなど新しい資産の登場により、デジタル終活の難易度も年々上がっている印象があります。
ここでは、遺品整理を行う際に「デジタル終活」を忘れずに進めるための準備や注意点について、実務的な視点から整理していきます。具体的な手順や確認項目を知ることで、不安を減らしながら冷静に対応できるようになります。
まずは何を確認すべき?最初に行う準備
遺品整理を始める際、最初に行っておくとよいのが「情報の棚卸し」です。デジタル終活を意識するなら、まずは故人の使用していた機器やサービスの全体像を把握することが大切です。
確認の起点としてよく用いられるのは、スマートフォン、パソコン、タブレットといったデジタル端末です。
これらの機器には、ネットバンキングやSNS、電子書籍など、多種多様なログイン情報やデータが保存されていることがあります。
まずは、以下のような項目について整理してみるとスムーズです。
- 故人が普段使っていた端末(スマホ、パソコン、タブレットなど)
- 使用していたメールアドレス(複数ある場合も)
- SNSのアカウント(X、Instagram、Facebookなど)
- ネット銀行や証券会社の取引履歴
- サブスクリプション(定期課金)サービスの有無
この時点ではすべてを把握できなくても構いません。「何があるか」を確認する入り口を探すという意識が重要です。まずは洗い出してみることから始めましょう。
デジタル終活を適切に進めるためには、まずこの“見える化”の一歩が欠かせません。
紙の書類と違う!デジタル情報の整理術
紙の書類は物理的な保管場所があるため、探せばある程度の情報は見つかることが多いですが、デジタル情報はそうはいきません。ログインしなければ確認できないサービス、通知がアプリで完結しているケースなど、紙の情報だけでは全体像を把握するのが難しいのが現実です。
そのため、デジタル終活の観点からは、日頃から「アカウントとパスワードの一覧」や「使っているサービスのリスト」を作成・保管しておくことが望ましいとされています。紙に書いて鍵付きの場所に保管する、信頼できる人に伝えておく、クラウド型のパスワード管理サービスを活用するなど、手段はさまざまです。
たとえば、ある50代の男性が定年後に行ったデジタル終活の例では、「メールアドレスにひもづくすべてのサービスを一覧にして、信頼できる兄弟に託していた」ことで、遺品整理の際に家族がスムーズに対応できたそうです。このように、日常の延長線上で少しずつでも整理しておくことで、万が一のときの混乱を防ぐことができます。
また、クラウド保存されたデータ(Google Drive、iCloudなど)や、スマホの中のアプリ、写真、連絡先なども、遺された方にとって重要な手がかりとなることがあります。「紙には残せない情報」だからこそ、日頃の整理と引き継ぎの意識がデジタル終活の要になります。
故人のスマホ・PCから探すべきデジタル資産とは
遺品の中でスマホやパソコンが見つかった場合、最初に確認したいのは「どのような資産や契約が含まれているか」という点です。デジタル資産には金銭的な価値を持つものだけでなく、故人の生活に関する契約や記録も含まれます。
たとえば、以下のような項目が重要なデジタル資産と考えられます。
- ネット銀行・ネット証券のログイン情報と残高
- クレジットカードのWeb明細
- 電子マネーやポイント残高(楽天ポイント、PayPay、Suicaなど)
- 定期課金の契約(音楽、動画、健康系アプリなど)
- オンラインショッピングの履歴(Amazon、楽天など)
- クラウド保存されたファイルや写真
特に注意が必要なのは「自動引き落とし型の契約」です。
放置しておくと、気づかぬまま長期間引き落とされ続けてしまうこともあります。2022年の民間調査では、サブスク契約の存在に遺族が気づかず、半年以上そのままになっていたという例が複数報告されています。
デジタル終活では、これらの「見えない契約」や「隠れた資産」をきちんと棚卸しできるよう、生前からリスト化しておくことが勧められています。端末を開く前に、事前にどのようなサービスを使っていたかを予測できれば、スムーズに調査が進む可能性も高まります。
NFTや仮想通貨・ネット証券も忘れずに
近年は、従来の現金や預金だけでなく、仮想通貨(暗号資産)やNFT(非代替性トークン)、ネット証券などの新しい形の資産を保有する人も増えてきました。これらは、適切に相続しなければアクセス不能になったり、価値が消失するリスクもあるため、遺品整理の際には注意が必要です。
仮想通貨やNFTは、ウォレット(資産の保管場所)のパスワードを知らなければ、誰もアクセスすることができません。しかも、取引履歴や残高がすべてオンラインで完結するため、紙の記録を残していない人も多いのが現状です。
ネット証券についても、口座が郵送物なしで開設されているケースがあり、知らないと存在すら発見できない場合があります。たとえば、SBI証券や楽天証券などのオンライン証券は、完全にWeb上だけで運用・確認ができるため、紙の手がかりがまったく残っていないということも珍しくありません。
デジタル終活をきちんと行っておくと、こうした新しい資産も遺族が正当に引き継ぐことができるようになります。資産価値のあるものを無駄にしないためにも、「もしかしたら持っているかも」と感じたときは、丁寧な調査と確認が大切です。
業者へ依頼する場合は事前に費用相場と注意点を知っておこう
遺品整理やデジタル機器のデータ整理を自分たちだけで進めるのが難しいと感じた場合、専門の業者に依頼するという選択肢もあります。最近では「デジタル遺品整理」に特化したサービスを提供する業者も増えており、パソコンやスマホ内のデータを安全に取り出すサポートをしてくれるところもあります。
ただし、業者選びには慎重さも必要です。費用は作業内容によって変動しますが、一般的にはデジタル機器1台あたり1万〜3万円前後が相場とされています。また、データ復旧や削除、アカウント閉鎖など、依頼内容によっては追加料金が発生することもあります。
注意点としては、以下のような点が挙げられます。
- 個人情報の取り扱いに関するポリシーが明確か
- 機器の持ち出しではなく、現地作業が可能か
- トラブル時の保証や報告書の有無
事前に見積もりをとり、複数社を比較することで、信頼できる業者を見つけやすくなります。費用に不安がある場合は、自治体による支援制度や、信託銀行・弁護士事務所との連携サービスを活用する方法もあります。
デジタル終活と遺品整理のプロセスは、想像以上に複雑です。自分たちでの対応に不安がある場合は、無理をせずプロに相談することも、安心と確実性を得るための一手といえるでしょう。
【チェックリスト付き】これで安心!デジタル遺品整理の手順
デジタル終活の重要性が広く知られるようになった一方で、「実際にはどう進めたらよいのか分からない」という方も少なくありません。
特に、遺品整理の現場では、スマホやパソコンに関する情報の取扱いが属人的になりやすく、「誰が何を止めたか」「どの情報がまだ残っているのか」が曖昧になってしまうことも多くあります。
だからこそ、手順を一つひとつ整理したチェックリストのような形式で進めることで、誰でも迷わず対応できる体制を整えておくことが大切です。デジタル終活は特別な技術や知識が必要というわけではなく、丁寧な確認と情報の見える化が基本となります。
このパートでは、IDやパスワードのリスト作成方法、よく使われるオンラインサービスの確認ポイント、写真やクラウドデータの保存・削除の判断など、実際に役立つ整理手順を具体的に紹介していきます。ご自身の終活としても、またご家族の備えとしても、日常の延長線上で取り入れていただける内容です。
ID・パスワードの管理リストはこう作る
デジタル遺品整理の第一歩はID・パスワードの整理です。なぜなら、あらゆるオンラインサービスにアクセスするためには、この情報が“鍵”になるからです。
ログインできなければ、ネット銀行の残高確認も、SNSアカウントの削除もできません。
しかし、ほとんどの方は複数のサービスでIDやパスワードを分けて使用しており、それぞれを覚えているわけではありません。
中には、2段階認証を設定しているサービスもあり、スマホやメールが使えなければさらに手続きが煩雑になる場合もあります。
デジタル終活の観点からは、次のような情報を「管理リスト」にまとめておくと安心です。
- サービス名(例:楽天銀行、X(旧Twitter)など)
- ログインIDまたは登録メールアドレス
- パスワード(可能ならヒント形式で)
- 登録者名義(自分名義か、ビジネス用か)
- 利用状況(頻繁に利用、使わなくなった等)
このリストは紙に書いて金庫に保管するという方法でも良いですし、信頼できるパスワード管理アプリを使ってクラウド上に記録する方法もあります。
ただし、クラウドに保存する場合はアカウント情報を託す相手やバックアップ方法についても事前に決めておくことが大切です。
家族に知らせておく、または茶封筒やノートに「重要情報」と明記して遺品に紛れないようにするなどがデジタル終活の成功につながります。
SNS・通販・サブスク・停止すべき主要サービス一覧
遺品整理の際に重要になるのが、利用中だったオンラインサービスの停止手続きです。これを怠ると、引き落としが続いたり、SNSアカウントが不正利用されたりといったトラブルが起こる可能性があります。
中でも特に確認しておきたいのが、次の4つのジャンルです。
① SNSアカウント
X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなど。SNSは「デジタルな名刺」として使われていることも多く、残されたままにしておくと他人がプロフィールにアクセスできてしまいます。フェイスブックでは「追悼アカウント」への切り替え機能もあるため、必要に応じて活用が可能です。
② 通販サイト
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど。自動注文機能やクレジットカード情報が登録されていることがあり、退会処理をしないと誤って商品が届いたり、個人情報が残り続けたりします。定期便は特に注意が必要です。
③ サブスクリプション
Netflix、Spotify、YouTube Premium、オンラインフィットネスや学習アプリなど、定期支払いのサービスは見落とされがちです。停止手続きが遅れると毎月の支出が無駄になります。
④ メールアカウント・クラウドサービス
GmailやiCloud、Dropboxなどは、多くの情報の「入口」になっているため、最後まで重要な管理対象です。特にGmailを使用している場合は、他の多数のサービスとも連携しているため、アカウント停止は慎重に進める必要があります。つまりGmailを先に停止してしまうと、他の重要情報が閲覧・発見できなくなってしまうので
これらのサービスは個別の解約ページや問い合わせ窓口から手続きが必要になるため、デジタル終活の段階で一度「利用中のサービス一覧」を棚卸ししておくことが非常に有効です。
遺品整理のときにはそれを参考にして速やかに対応できる体制を整えておくと安心です。
写真・動画・クラウドのデータ保存or削除の判断基準
スマートフォンやパソコンに残された写真や動画、そしてクラウドストレージ上のデータは思い出として残すべきか、プライバシー保護の観点から削除すべきか、判断が難しい部分でもあります。特に遺族にとって、どのデータを残すべきかは感情的な側面も大きく関わってくるため、単なる作業では済まないケースも多いです。
そのため、デジタル終活の中では「どのようなデータをどこに保存し、どれを削除してほしいか」という指針を、生前のうちに自分の意思で示しておくことが大切だとされています。
判断の基準としては、以下のような観点が参考になります。
- 家族にとっての思い出となる写真(旅行、記念日など)は保存対象に
- 他人とのメッセージ履歴や個人的なメモ・見られたくない写真・動画などは削除対象に
- 仕事用データは会社の規定に従うか、事前に引き継ぎを行う
- 不明なファイルはすぐに削除せず、まずは中身を確認する
また、GoogleフォトやiCloudなどのクラウドストレージに保存されたデータは容量制限や課金の有無にも注意が必要です。知らない間に自動課金が継続していることもあるため、データの整理だけでなく契約状況の確認もセットで行うと効果的です。
いずれにしても取っておきたいデータは1か所にまとめておくことが重要です。
近年では、「デジタル遺言サービス」や「生前に削除予約ができるクラウドサービス」も登場しており、事前にデータの扱いを指定できるようになってきています。こうしたツールを活用すれば、より自分らしい形でデジタル終活を実現し、遺された方への配慮につながる可能性があります。
遺品整理に活かせる「生前準備」のすすめ
遺品整理をスムーズに行うためには、やはり「生前の備え」が欠かせません。特にスマホやパソコン、クラウド上に情報が分散される現代においては、亡くなられた後にそれらを一から探し出すのは、残されたご家族にとって大きな負担になりかねません。
だからこそ、日頃から自分の情報を少しずつ整理し信頼できる形で家族に伝えておくことが、安心と円滑な遺品整理につながっていきます。
こうした「生前準備」は、何か特別なイベントを待たなくても、思い立ったときにできることから始められます。
このパートでは、デジタル終活の実践的なステップや、情報共有の工夫、そしてエンディングノートへの記載方法などを詳しくご紹介しながら、「備えることの大切さ」をお伝えしていきます。
生前にやっておきたいデジタル終活3つのステップ
デジタル終活は難しそうに思えるかもしれませんが、実は段階的に進めれば、誰にでも無理なく取り組める内容です。大切なのは「完璧を目指す」のではなく、「必要な部分だけでも整理しておく」ことです。
生前にできる基本的なステップとして、次の3つが挙げられます。
① デジタル資産の棚卸しをする
まずは、自分が日常的に使っているスマホやパソコン、ネットサービスなどをリストアップしましょう。どのサービスに登録しているか、IDやパスワードはどこに保管しているかを確認するだけでも、全体像が見えてきます。
② 優先順位を決めて管理する
ネットバンキングや証券口座、暗号資産など、金銭に関わる情報は優先度が高くなります。次にSNSやメール、サブスク契約などを分類し、「停止すべきもの」「引き継いでほしいもの」を整理しておくとよいでしょう。
③ 家族や信頼できる人と情報を共有する
整理した情報は、自分だけで保管するのではなく、必要な部分だけでも家族や信頼できる知人に伝えておくと、いざというときに役立ちます。内容すべてを共有する必要はありません。「どこに何があるか」を伝えておくことが最初の一歩になります。
このような手順で進めていくことで、デジタル終活の準備が自然と整っていきます。自分にとっても心の整理になりますし、遺品整理の際にも大きな手助けとなります。
家族に迷惑をかけない情報共有のコツ
デジタル終活でよく聞かれるお悩みのひとつが「どうやって家族に伝えればよいかわからない」というものです。確かに、ログイン情報やプライベートなデータを丸ごと伝えるのは抵抗があるという方も多いでしょう。
そこで重要になるのが「必要なときに、必要な情報だけが伝わるようにする」という考え方です。
たとえば、IDやパスワードの一覧をUSBやノートにまとめ、封をして金庫や信頼できる人に預けておくという方法があります。中身をすぐに見られないようにしながら、いざというときにだけ開けてもらうという形にすることで、プライバシーと安心感のバランスが取れます。
また、家族と直接話すのが難しい場合には、エンディングノートや「死後に送信されるメッセージ」機能があるWebサービスを利用するという方法もあります。
たとえば、一部のクラウドサービスでは「一定期間ログインがなければ、指定された人に情報が通知される」設定が可能です。
情報共有は「量」ではなく「質」が大切で、たくさん伝えるのではなく、「誰が何を知っていれば混乱しないか」に焦点を当てることが、家族にとってもご自身にとっても優しいデジタル終活となります。
エンディングノートに書くべき“デジタル資産”の具体例
エンディングノートは自分の意思を記録しておく大切なツールですが、デジタル資産について記載している人はまだ少ない傾向があります。
特に、高齢の方やデジタルに不慣れな方ほど、「何を書けばいいのかわからない」と感じているようです。
(エンディングノートも簡易的なものや古いノートだとデジタル資産についての記載項目が用意されておらず見落とされがちになっているので、新しいものを使いましょう)
そこで、エンディングノートに記載しておくと安心な“デジタル資産”の項目を以下にご紹介します。
- 使用しているスマホ・パソコンの機種名、ロック解除方法
- メインで使っているメールアドレスとそのパスワード(ヒント形式でも可)
- 利用中のネット銀行、証券口座、暗号資産の有無と保管方法
- SNSアカウント(Facebook、Instagram、Xなど)の一覧と処理希望(削除、残すなど)
- サブスクリプションサービスとその停止希望
- クラウドストレージ(Google Drive、iCloudなど)の存在と保存されている内容
- データの扱いについての意思(削除してほしい、特定の人に渡したいなど)
これらはすべてを正確に書く必要はなく、「自分が使っていたことを知ってもらう」「判断の参考になるヒントを残しておく」だけでも、遺族の助けになります。
デジタル終活を通してエンディングノートを見直すことで、「自分に何が必要で、何を残したいのか」という視点が自然と育ちます。また、残される方にとっても、気持ちの整理がしやすくなるというメリットがあります。
デジタル終活は「死後のため」だけではなく、「今を安心して生きるため」の準備でもあります。
誰もが日々、少しずつデジタルな痕跡を残している現代だからこそ、心と情報の整理をバランスよく進めていくことが、自分自身にも家族にも優しい生き方につながっていくのではないでしょうか。
最終的な判断に迷う場面や、より確実な対処を希望される場合は信託銀行や法律・ITに詳しい専門家への相談をおすすめいたします。生前の備えが、安心と信頼の形として未来へつながっていくことを願っています。
まとめ:デジタル終活と遺品整理の課題はますます増える
スマホやパソコンを使うことが日常となった今、私たちは日々の生活の中で、知らず知らずのうちに多くのデジタル情報を蓄積しています。そしてその多くは、従来の遺品のように目に見える形では残らないため、「亡くなった後に誰がどう整理するか」が大きな課題となってきています。
遺品整理においては、物理的なモノだけでなく、オンライン上の契約や記録、SNS、写真、資産管理まで幅広い対応が必要とされる時代になりました。こうした変化のなかで、「デジタル終活」がますます重要な意味を持ってきています。
最後に残された家族に迷惑をかけないための考え方や、専門業者の活用方法についても確認しながら、全体のまとめとしたいと思います。
デジタル遺品で残された家族に揉め事やトラブルを残さない
突然の出来事により、故人が使っていたスマホやパソコンが遺品として残されたとき、ご家族は「何がどこにあるのか」「どう扱えばいいのか」で戸惑いがちです。
特に金銭に関わるデジタル資産や、SNSなどプライベートな記録が関係してくると、誰が管理・判断を担うべきかで、意見の違いが生じることも少なくありません。
仕事をしながら死後整理をするのは非常に大変で、時間も手間もかかります。
実際、2020年に行われた某法律事務所の調査では、「相続時に揉めた原因の上位に“デジタル遺産の所在がわからなかったこと”がある」と報告されています。
このようなトラブルはほんの少しの「事前準備」で回避できる可能性があります。
たとえば、生前にエンディングノートで「自分が使っていたサービス」や「SNSの処理方針(削除してほしい/残してほしい)」を明記しておくだけでも、ご家族の判断負担は大きく軽減されます。
「デジタル終活」は情報や資産を守るだけでなく、大切な人間関係を守ることにもつながる取り組みです。残された人の心に優しく寄り添う、そんな終活のあり方を意識していきたいものです。
業者を使う選択肢:信頼できる業者を選ぶポイント
デジタル終活や遺品整理は、自分でできる部分もありますが、「もうお手上げ」「時間がない」という方は業者を使うという選択肢もあります。
特に「故人のスマホが開けない」「PCの中に重要なデータが入っていそうだがパスワードが不明」といった場合には、専門の業者に依頼するという選択肢が有効です。
とはいえ、大切な個人情報を扱うからこそ、業者選びは慎重に行う必要があります。依頼の際は、以下のようなポイントを確認しておくと安心です。
- 個人情報保護の取り扱いが明示されているか
データを扱う業者には、プライバシーを保護する体制や契約内容が整っていることが求められます。依頼前に「個人情報保護方針(プライバシーポリシー)」が公開されているか確認しておきましょう。 - 作業内容と範囲が明確か
「データの抽出のみ」なのか、「SNSの削除手続き代行」まで対応しているのかなど、業務範囲がはっきりしているかを確認します。 - 現地対応か持ち帰り対応か
端末を外部に持ち出さず、現地で作業できるかどうかも重要な判断ポイントです。特に遺族として不安がある場合は、立ち会い型のサービスを選ぶとよいでしょう。
また、最近では「デジタル遺品整理士」などの専門資格を持つスタッフが対応する業者も増えてきており、信頼性を見極める参考材料となります。
専門家に頼ることで、個人では対応が難しい部分も円滑に処理できる可能性があります。
費用相場と注意点を知っておこう
業者にデジタル遺品整理を依頼する際、気になるのが費用の問題です。相場を知っておくことで、見積もりの段階で戸惑わず、納得感を持って判断しやすくなります。
2025年時点の一般的な費用相場としては、以下のような水準が多く見られます。
- スマホ・タブレットのデータ抽出:1台あたり1万〜3万円前後
- パソコンのデータ整理・削除:2万〜5万円程度
- アカウント削除代行やクラウドサービスの解約支援:1件あたり5千〜1万円ほど
- 出張対応費:別途5千〜1万円前後(地域や交通費により異なる)
ただし、依頼内容が複雑だったり、特殊な暗号化・ロックがかかっている場合には、追加費用が発生することもあります。また、復旧作業は「成功報酬型」としている業者もありますので、料金体系を事前にしっかり確認することが重要です。
さらに注意しておきたいのが、「相場よりも極端に安い業者」や「対応が不透明な業者」は避けるという点です。
デジタル終活に関わる情報は極めて個人的かつ機密性の高いものが多いため、料金だけで選ばず、実績や口コミ、信頼性を優先して判断しましょう。
費用は決して安くありませんが、「大切な情報を安全に扱ってもらえる」という安心感には、代えがたい価値があります。専門家に頼るという選択は、心の負担を軽くし、遺族の思いやりをカタチにする方法のひとつです。
デジタル時代を生きる私たちにとって、「情報の整理」はもはや避けて通れないテーマです。
デジタル終活を通して、いざというときの不安や混乱を防ぎ、遺品整理の負担を軽くすることは、自分にとっても家族にとっても大きな安心につながります。
どこから手をつけたらよいかわからないときは、まずは「自分が今どんなサービスを使っているか」を書き出すところから始めてみてください。そして、不安な部分や専門性が求められる対応については、経験豊富な専門業者や信頼できる士業の方に相談してみるのがおすすめです。
「情報を整理すること」は、「未来を整えること」。一歩ずつ、自分らしい形で進めていけるよう、今回の記事がそのお手伝いになれば幸いです。