家族に迷惑をかけない介護準備のチェックリスト|終活で必ず確認すべきこと

目次

皆さんこんにちは。

本日は終活を進める上で絶対に知ってもらいたい「家族に迷惑をかけないための介護準備のチェックリスト」について解説をしていきます。

本記事がおすすめな方
  • 将来の介護に備えたいが何を準備していいかわからない
  • 介護に備えるために今からできることを知りたい
  • 介護を受けるつもりはないけど、受けることになった場合どんなことをする必要があるか知りたい

終活と介護の準備は早めにかつ同時に進めるべき理由

多くの方は「終活はまだ先のこと」と考えがちですが、実際には介護の準備と終活は切り離せない関係にあります。

ある日突然の体調不良や事故、親御さんやご自身の介護が必要になったときに、何の準備もできていなければ、ご家族は大きな負担を背負うことになります。

終活というと「遺産やお葬式の準備」を思い浮かべやすいですが、実際には日常の暮らしや健康、介護の方針まで含めた総合的な準備を含めて終活と定義されています。もちろん将来の介護について考えることも終活の内のひとつです。

逆に早めに動くことで「まだ元気なうちに希望を残しておける」「必要な書類やお金の整理ができる」「家族と話し合って役割を確認できる」といった安心感が生まれます。

介護に備えた準備は早いほど、いざという時に困ることはありませんが、多くの方は「後回しでいいや」「その時になったら考えればいい」「介護なんて受けられるお金はないよ」などできない理由を並べがちですが、これは将来のリスクを後回しにしてしまっており、いざという時にご自身やご家族に負担がかかってしまうことが多いです。

介護の準備はお金を貯金をすることと同じで、いざという時にご自身・家族など誰も困ることがない状態にすることで安心感を生むことができます。

この章ではなぜ終活と介護を同時に進める必要があるのか、その理由を4つの視点から考えていきます。

「急な介護」が家族を混乱させるリスク

介護は多くのケースで「突然始まる」ものです。

急な病気や転倒による骨折をきっかけに、在宅介護や施設利用が必要になることがあります。準備がないまま始まると、ご家族は「どの施設を選べばよいのか」「費用はどうするのか」と短期間で判断を迫られ、精神的にも経済的にも追い込まれてしまうのです。

厚生労働省の調査によれば、介護が始まるきっかけの約4割が「病気やけがによる突然の変化」とされています。つまり、事後対応で介護の準備を始めている方が多いということです。言い換えれば介護について事前に備えていないと慌てて対応することになり、かえって家族の負担を増やす可能性が高いのです。

終活を進める中で介護の準備もあわせて進めておくことで、こうした混乱を和らげることができます。

終活の一部に介護チェックリストを組み込む

終活を考えるとき、「介護」に関する準備を抜きにすることはできません。財産やお墓のことを整理するだけでなく、「どこで介護を受けたいのか」「どんな医療を希望するのか」「介護費用をどのように確保するのか」といった内容をチェックリストにまとめておくことで、より具体的な準備ができます。

チェックリストは一度作ったら終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。健康状態や生活環境は年齢とともに変わります。更新を重ねることで、常に最新の状況に合った準備を保てます。

終活に介護のチェックリストを組み込むことは、将来の自分や家族を守る確実な一歩となるのです。

早めに準備しておけばあらゆるリスクが少ない

介護や終活に関わる準備は、早ければ早いほど柔軟に対応できます。

例えば、元気なうちに住まいをバリアフリーに改修しておけば、将来の転倒リスクを減らすことができます。任意後見制度や家族信託の契約も、判断能力があるうちにしか結べません。

また、介護費用の準備も同様です。早くから計画を立てることで、無理のない範囲で資産を整理したり、必要に応じて保険を見直したりできます。結果として「急な支出で困る」「判断できなくて契約できない」というリスクを減らすことができるのです。

終活を早めに始めることは、介護に関わるあらゆるリスクを少なくする大切な習慣といえます。

やるべきことをチェックリスト化して進めれば抜け漏れが少ない

終活や介護の準備は、一度に全てを完了するのは難しいものです。

しかし、「チェックリスト」にして一つひとつ確認しながら進めることで、抜け漏れを防ぎやすくなります。

例えば、「介護保険証の保管場所を共有したか」「延命治療の希望を伝えたか」「薬の情報を家族に渡しているか」といった具体的な項目を並べれば、自分と家族が同じ認識を持てます。

チェックリストがあることで、準備の進み具合が分かりやすく、家族の中で役割分担もしやすくなります。終活における介護準備は“見える化”して進めることが、安心への近道なのです。

ここでは6つの主要なチェックするべき項目について解説をしていきますので、ぜひご自身が「当てはまってか」・「当てはまる可能性が今後ありそうか」など「自分事」と捉えて読み進めてください。

【介護チェックリスト①】健康と生活習慣

介護について考えるきっかけ・入り口は身体や心の健康状態の変化から始まることが多いといわれています。

つまり、日々の健康維持や生活習慣を整えておくことが、そのまま介護の予防や負担の軽減につながります。

終活を考えるとき、財産や書類の整理と同じくらい大切なのが「自分の健康をどう守っていくか」という視点です。

終活の準備を考えるとき、つい「お金や書類の整理」「介護施設の検討」といった実務面に目が行きがちです。

しかし実際には将来の介護を左右する大きな要因は「健康状態」です。

定期健診や持病の管理、薬の情報共有、そして日々の食生活や運動習慣といった基盤が整っていなければ、介護のリスクは高まってしまいます。ここからは、介護チェックリストの最初のステップとして「健康と生活習慣」を取り上げ、具体的に見直しておきたいポイントを確認していきます。

定期健診・持病の管理はできているか

定期的な健康診断を受けることは、病気の早期発見・早期治療につながります。

高血圧や糖尿病といった生活習慣病は放置すれば介護が必要になるリスクを高める要因となります。日本では国や自治体が「特定健診」を推奨しており、40歳以上の方には毎年の受診が案内されています。

また、終活の一環として健康診断結果をファイルにまとめたり、家族に見せておくと安心です。

急に入院や介護が必要になったときに、過去のデータがそろっているだけで医療者の判断が早くなり、結果としてご自身の負担も減らせます。介護準備と終活を重ねて考えるなら、定期健診と持病の管理は欠かせないステップといえるでしょう。

薬の情報を家族に共有しているか

複数の病院に通院していると、薬の種類が増えやすくなります。「どの薬をどの時間に飲んでいるのか」「どの病院から処方されているのか」を自分だけが把握している状態は介護が始まったときに家族を困らせる原因になります。

特に高齢期には「飲み忘れ」「二重処方」「飲み合わせによる副作用」といったリスクが増えるため、薬の情報を整理し、家族と共有しておくことが安心につながります。

具体的には「お薬手帳を常に更新して家族に見せる」「飲んでいる薬のリストを紙やスマホにまとめておく」といった方法があります。

終活の観点からも、薬の情報をまとめて残すことは小さな準備でありながら大きな安心を生みます。介護の現場で混乱を防ぐためにも、早い段階で整理しておくことをおすすめします。

食生活・運動習慣を見直しているか

介護予防の基本は「日々の生活習慣」にあります。

栄養が偏った食事や慢性的な運動不足は生活習慣病だけでなく、筋力や体力の低下を招きます。その結果、転倒や骨折から介護が始まるケースは非常に多いとされています。

例えば、厚労省の「国民健康・栄養調査」によれば、野菜摂取量が少ない人ほど高血圧や肥満の割合が高い傾向が出ています。

また、1日30分のウォーキングを週5日続ける人は、フレイル(加齢による心身の衰弱)の発症率が低いという報告もあります。

食生活では「野菜をもう一皿」「塩分を控える」「魚や豆類を意識して摂る」といった小さな改善からで十分です。運動習慣も「毎朝のストレッチ」「通勤で一駅分歩く」など、日常に取り入れやすい工夫が効果的です。

終活に取り組むことは未来の生活を整えることでもあります。食事や運動を見直すことは、介護のリスクを減らし、自分らしい時間を長く楽しむための投資なのです。

【介護チェックリスト②】住まいと生活環境

介護が必要になったときに大きな影響を与える要因のひとつが「住まいと生活環境」です。

日常のちょっとした不便や危険が、そのまま介護の負担や事故につながることもあります。

終活を考えるときは、財産や医療の準備だけでなく、住まいの環境整備にも目を向けることが欠かせません。

ここでは、バリアフリー対策や住み替えの検討、そして災害時の備えについて整理していきます。

段差や階段などバリアフリー対策は十分か

高齢期に入ると、ちょっとした段差でも転倒や骨折の原因になりやすくなります。

実際、介護が必要になるきっかけの多くは「転倒・骨折」といわれています。玄関の上がり框、浴室の出入り口、トイレの段差など、普段は気にならない箇所も危険ポイントに変わるのです。

そのため、住まいのバリアフリー化は終活の一部として重要です。具体的には、階段や廊下に手すりを設置する、滑りにくい床材へ張り替える、段差をスロープにするなどがあります。

厚生労働省の介護保険制度では、要介護認定を受けた方に対して住宅改修費用の一部を補助する制度があり、上限20万円まで支給されます。(25年9月時点の情報)

これを利用すれば、費用負担を抑えながら安全な住まいに整えることができます。

また自治体によっては「住宅改修費の補助制度」があり、介護保険を利用してバリアフリー改修の一部費用を補助してもらえる仕組みも整っています。

こうした対策を元気なうちに進めておくことは、終活と介護準備を同時に進める有効な方法といえるでしょう。

将来を見据えた住み替えの検討はしたか

住み慣れた自宅での生活は安心感がありますが、将来の介護を考えると「住み替え」という選択肢も視野に入れることが望ましい場合があります。

二階建ての住宅に住んでいる方で階段の昇り降りが難しくなることを考えれば、平屋やマンションへの住み替えは考えるべき一つの選択肢です。

また、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)やシニア向けマンションといった選択肢も広がっています。

こうした施設は見守りサービスやバリアフリー構造が整っており、介護が必要になった際もスムーズに移行できます。

終活の中で「住まいをどうするか」を考えることは、介護生活の安心感を高める準備につながります。

家族と一緒に現実的な選択肢を検討しておくことが大切です。

災害や緊急時の避難ルートを家族と確認しているか

日本は地震や台風など自然災害が多い国です。

高齢になったときに災害が起きれば、避難のスピードや安全確保が難しくなり、介護が必要な方にとっては特に大きなリスクになります。

そのため、普段から「避難ルートはどこか」「どの避難所に行くのか」を家族と確認しておくことは重要です。さらに、薬や介護用品をまとめた非常用バッグを用意しておけば、いざという時に安心です。自治体によっては「要支援者名簿」に登録でき、災害時に支援を受けやすくなる制度もあります。

こうした取り組みは、介護に直結する住まいの安全対策として終活の一部に組み込むべき準備です。日常生活だけでなく、非常時の視点も持っておくことが、ご家族への安心につながります。

【介護チェックリスト③】お金・保険・制度の確認

介護が必要になったとき、最も現実的な課題となるのが「お金と制度の活用」です。介護保険や年金といった公的制度をきちんと使えるかどうかで、家計への負担は大きく変わります。また、保険や資産の整理状況によって、ご家族がすぐに対応できるかどうかが決まります。終活の中で、介護に直結するお金や制度を確認しておくことは、ご本人にとっても家族にとっても安心の土台になるといえるでしょう。

介護保険証・年金手帳の保管場所を共有しているか

介護サービスを利用するには「介護保険証」が必要不可欠です。

要介護認定の申請や介護サービスの契約時に提示が求められるため、いざという時にすぐ取り出せる場所に保管しておくことが望ましいとされています。

また、年金手帳や年金証書も重要な書類です。年金の受給状況や支給額は介護費用の見通しを立てる上で大切な情報になります。しかし、本人しか保管場所を知らないまま認知症や入院をしてしまうと、家族が探し回り、手続きに時間がかかることがあります。

そのため、終活の一環として、介護保険証や年金手帳の保管場所を家族に共有しておくことは欠かせません。実際には「重要書類はこの引き出しにまとめてある」と伝えるだけでも大きな安心につながります。

生命保険や医療保険の契約内容を把握しているか

介護が始まると、医療費と介護費用が同時に発生することがあります。

その際に役立つのが、生命保険や医療保険の給付金です。しかし、契約内容が不明確なままでは「どんなときにいくら受け取れるのか」が分からず、必要なときに請求できないこともあります。

例えば、医療保険の中には「介護状態になった場合に一時金が出る特約」が付いている商品もあります。また、生命保険では葬儀費用や残された家族の生活費をカバーできる場合もあるため、介護に備えるうえでも確認しておくことは有効です。

介護と終活の準備では、加入している保険の内容を整理し、必要に応じて家族と共有しておくことがとても大切です。契約書をまとめてファイルに入れる、一覧表にして渡すなど、形にして残す工夫をしておくと安心です。

介護費用に備えて資産を整理しているか

介護には少なくない費用がかかります。厚生労働省の調査によると、介護にかかる平均費用は「月8万〜10万円程度」といわれています。これに加え、施設に入所する場合は入居一時金や月額利用料がかかり、数百万円規模になることもあります。

近年では物価上昇や介護の人手不足の影響により、さらに高騰していて、10年後にはもっと費用が掛かると試算もされています。

そのため、資産を整理して「介護費用にあてられる分」を明確にしておくことが大切です。

銀行口座が複数に分散している場合は、メインで使う口座を決めたり、定期預金や証券口座なども把握できるようにしておくと、ご家族がスムーズに対応できます。

また、場合によっては不動産の活用(リースバックや売却)を検討することも現実的な選択肢になります。終活のプロセスで資産を整理しておけば、介護が必要になったときの不安を大きく減らすことができるのです。

【介護チェックリスト④】医療・介護に関する意思表示

介護や医療の場面では、ご本人が「どんな治療や介護を望むか」を明確にしていないと、ご家族が判断に迷うことが多くあります。

結果として家族の間で意見の違いが生まれたり、後悔を残してしまうケースも見られます。終活を考える上で、財産整理や書類の準備と同じくらい重要なのが「自分の意思を伝えること」です。ここでは、医療や介護に関する意思表示の具体的なチェックポイントを整理します。

延命治療の希望を家族に伝えているか(遺言書やエンディングノート)

延命治療に対する希望は、とてもデリケートでありながら介護や医療の現場では避けて通れないテーマです。

人工呼吸器や胃ろうなどを使用して生命を維持するかどうかは、ご本人の考え方によって大きく異なります。しかし、その意思を伝えないまま急な判断を迫られると、ご家族は「本当にこれで良かったのか」と悩むことが少なくありません。

そこで役立つのが、エンディングノートや事前指示書に自分の希望を書き残す方法です。「積極的な延命を望むのか」「自然な流れに任せたいのか」を言葉にして残しておけば、家族が迷わず判断できます。終活において延命治療の希望を家族に伝えることは、介護現場での不安を和らげる大切な準備といえるでしょう。


介護を受けたい場所(在宅・施設)を考えているか

介護が必要になったとき、「在宅で過ごすのか」「施設に入るのか」という選択は生活の質を大きく左右します。

在宅介護は住み慣れた環境で安心感がありますが、家族の負担が増える面もあります。一方で施設介護は専門的なサポートを受けやすい一方、費用や入居待ちといった課題もあります。

大切なのは、どちらを選ぶにしても「自分はこうしたい」という考えを家族と共有しておくことです。例えば、「できる限り在宅で過ごしたいが、家族の負担が大きくなったら施設でも構わない」といった柔軟な意思表示も有効です。

終活の一環として、介護を受けたい場所を考えておくことは、ご本人の安心だけでなく、ご家族にとっても判断の拠り所になります。


任意後見制度や家族信託の利用を検討しているか

認知症などで判断能力が低下すると、自分で契約や財産管理ができなくなります。その備えとして利用できるのが任意後見制度や家族信託です。

任意後見制度は将来の判断力低下に備えて、信頼できる人に財産管理や介護に関する契約を任せられる仕組みです。公正証書で契約を結んでおけば、必要なときに後見人が正式にサポートできます。

一方の家族信託は不動産や預貯金といった財産を信頼できる家族に託し、介護費用や生活資金として使ってもらう方法です。「施設費用をこの口座から支払う」といった具体的な運用も可能で、柔軟さがあります。

終活でこうした制度を検討することは介護とお金の問題をスムーズに解決するための現実的な備えです。早めに選択肢を知っておくだけでも、安心感は大きく変わります。

【介護チェックリスト⑤】家族との情報共有

介護の準備を進めるうえで忘れてはならないのが「情報共有」です。

せっかく終活で大切な準備を整えても、家族が内容を知らなければ活かされません。特に介護の場面では、緊急時に誰へ連絡するのか、どのような介護を望んでいるのか、家族同士で役割をどう分担するのかといった情報を、事前に整理して伝えておくことが大切です。ここでは、その具体的なポイントを3つに分けて確認していきましょう。


緊急連絡先を一覧化して渡しているか

突然の体調不良や事故は、介護が必要になるきっかけのひとつです。

その際にすぐ行動できるよう、緊急連絡先を一覧化しておくことは非常に重要です。主治医やかかりつけ薬局、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなど、関係先をまとめておけば、誰が介護に関わっても安心して対応できます。

連絡先を紙に書いて渡す方法のほか、スマホのメモ機能やクラウドサービスを利用するのも有効です。ただし、デジタルに弱い家族がいる場合は紙のリストも必ず用意しておきましょう。

一番は自宅の目立つところ(冷蔵庫や玄関のドアなど)に貼っておくことが重要です。緊急搬送をしてくれる救急隊の方やデイサービスで様子を見に来てくれた方が気づけるようにしておくことが大事です。

介護に直結する情報は一覧化して伝えることが、終活の中でも重要な準備です。


介護に関する希望をエンディングノートに書いたか

エンディングノートは、財産や葬儀の希望だけを書くものではありません。

介護に関する考えを記録する場としても活用できます。「できる限り在宅で過ごしたい」「施設入所を視野に入れている」「延命治療は望まない」など、本人の意思を残しておくことは、家族が判断を迫られるときに大きな助けになります。

エンディングノートに書いておけば、家族の間での意見の食い違いも少なくなり、本人の望む介護を実現しやすくなります。終活でエンディングノートを活用し、介護の希望を書き残すことは、家族への負担を軽減するための実践的な方法といえます。


介護の役割分担を家族と話し合っているか

介護は一人の家族だけに任せてしまうと、心身の負担が大きくなりやすいものです。

そのため、あらかじめ「誰がどの役割を担うのか」を話し合っておくことが重要です。例えば、「長男は金銭面を支える」「次女は介護の実務を中心に行う」「離れて住む家族は定期的に様子を見に来る」といった形で役割を分担すれば、負担の偏りを防げます。

また、近年は介護サービスや行政の支援を併用することで、家族全員の負担を減らす方法も広がっています。終活のプロセスで家族会議を開き、介護の役割分担を共有することは、将来の不安を小さくする確かな準備です。

【介護チェックリスト⑥】デジタル終活

現代の生活では、銀行口座やクレジットカード、サブスク契約からSNSまで、あらゆる情報がデジタルの中に存在しています。

こうした「デジタル資産」を放置すると、介護が始まったときや万が一のときに家族が対応に困る原因となります。そのため、終活の中でデジタル終活を取り入れることは、介護準備の大切な一部といえるでしょう。ここでは、整理しておきたい3つの観点を紹介します。

ネット銀行・クレジット・サブスク契約を整理したか

ネット銀行やオンライン証券、クレジットカードの自動引き落としは、便利である反面、家族が把握できないまま残ってしまうことが少なくありません。特にサブスク(動画配信、音楽配信、オンラインサービスなど)は、毎月の支払いが続いてしまい、本人が使えない状態でも解約されず家計を圧迫するケースがあります。

そこで、契約している口座やカード、サブスクの一覧を作っておき、定期的に見直すことが大切です。

「このサービスは使い続けたい」「これは解約して良い」と整理しておけば、家族が迷わず対応できます。介護の準備として終活にデジタル契約の整理を含めることは、将来のトラブルを未然に防ぐ有効な方法です。


SNSやメールのログイン情報を控えているか

FacebookやX(旧Twitter)、InstagramなどのSNSやメールアカウントも、放置すると大きな心配事になります。介護や入院で長期間ログインできないまま放置されると、アカウントが乗っ取られたり、個人情報が流出するリスクもあります。また、ご本人が亡くなられた後に残された投稿や写真が「どう扱うべきか」と家族を悩ませるケースも少なくありません。

エンディングノートや専用の管理シートにログイン情報を残しておけば、家族が適切に対応できます。近年では「デジタル遺品整理サービス」を提供する専門業者もあり、そうしたサポートを利用する選択肢もあります。介護の現場で混乱しないよう、終活の一部としてSNSやメールの情報整理をしておくことが安心につながります。

データ(写真・動画)の保存・削除方針を決めているか

スマホやパソコンの中には、多くの写真や動画が保存されています。それらは大切な思い出である一方、残された家族にとって「どこまで残すか」「誰に見せるか」を判断するのが難しいものです。特に個人的なデータやプライベートな記録は、ご本人の意思が分からないまま残されると困惑の原因となります。

そのため、「残したいデータ」と「削除したいデータ」を事前に分けておくことが大切です。外付けハードディスクやクラウドに保存して共有する、不要なものは整理して削除しておくといった方針を決めておけば、家族が迷わず対応できます。

デジタル終活で写真や動画の扱いを整理しておくことは、介護の準備としても心の負担を軽くする有効な手段です。

小さな終活準備の積み重ねが“介護不安ゼロ”につながる

介護の備えや終活の準備というと「大掛かりで難しいもの」と感じる方も少なくありません。

しかし実際には、生活の中でできる小さな準備を積み重ねることが、一番の安心につながります。重要なのは「一度に完璧に仕上げること」ではなく、「今できることから始めて続けること」です。ここでは、そのための具体的な視点を4つに分けて考えてみましょう。


一度に全部は無理でも「今できること」から始める

終活も介護準備も項目が多いと気後れしてしまうものです。

財産の整理、住まいの対策、健康管理、デジタル資産の整理……すべてを一度に進めようとすると大変ですが、今日からできることは必ずあります。

例えば「薬の情報をまとめる」「エンディングノートに1ページだけ記入する」「口座を一つにまとめる」といった小さな行動でも十分です。その積み重ねが、将来の安心へとつながります。終活は大きなイベントではなく、日常生活の中に取り入れていくものと考えると取り組みやすくなります。


チェックリストを家族と共有し定期的に見直す

終活や介護準備の項目をチェックリスト化して、家族と共有することは効果的です。一度作ったリストも、時間の経過とともに状況が変わります。健康状態や生活環境、資産状況が変わった際に定期的に見直すことで、常に「最新の準備」が保てます。

家族と一緒に確認することで、「誰がどの役割を担うのか」が自然に整理され、介護が始まったときに慌てることが少なくなります。終活と介護準備は、共有と更新を繰り返すことが安心につながるプロセスなのです。


おひとりさまは早めの準備が将来の自分を助ける

配偶者や子どもがいない「おひとりさま」にとって、介護準備や終活はさらに重要です。判断や手続きを頼れる家族が少ない分、自分の意思や財産管理を早めに整理しておくことが将来の自分を助けます。

例えば、任意後見制度や家族信託を利用して信頼できる人に権限を託すこと、介護サービスの利用方法を調べておくこと、エンディングノートに具体的な希望を書き残しておくことは、おひとりさまにとって大きな支えになります。介護と終活を早めに始めることは、自分を守る最も有効な準備といえるでしょう。

終活は未来の安心をつくる前向きなプロセス

「終活」と聞くと後ろ向きに感じる方もいますが、実際には未来を安心して生きるための前向きなプロセスです。介護に備えて生活環境を整えること、健康を意識して習慣を改善すること、家族と価値観を共有することは、残りの人生を豊かに過ごすための基盤になります。

終活は自分のためであると同時に、ご家族の負担を軽くする思いやりでもあります。そして何より「まだ元気な今だからできること」が多くあります。小さな準備を積み重ねていけば、介護に対する不安を減らし、より安心できる未来を迎えることができます。


当社では、終活や介護に関する準備を一人で抱え込まず、安心して進めていただけるようサポートをご用意しています。「何から始めたらよいかわからない」と感じたら、どうぞお気軽に当社へご相談ください。