皆さんこんにちは。株式会社プロストイックです。
本日は「管理職だけど退職をしようと考えている」の方や「退職代行を使って辞めたいと考えている管理職の方」必見の内容となっています。
- 自分が管理職・上司をやっているが退職を言い出せずにいる
- 経営者のパワハラに苦しんでいる
- 組織・部署の雰囲気が悪く辞めづらい
当サイトでは上司のマネジメント系に関する悩みの記事が非常に多く読まれています。人事など向けではなく、現場の管理職に多く読んでいただいている内容となっております。
現場社員だけではなく管理職も退職代行を使い始めている

「退職代行」と聞くと、多くの人は新卒社員や若手社員が使うものと想像するかもしれません。しかし、近年ではこのサービスを利用するのが、現場で指揮を執る側であるはずの「上司」、つまり管理職たちにまで広がっています。
自ら部下を指導し、組織をまとめる立場にある彼らが、なぜ退職すら“自分で言えなくなっている”のか。
これは一時的な異変ではなく、働き方や職場環境の構造的なひずみが表面化してきた証でもあります。
かつては“強いリーダー像”が期待された上司という立場にあっても、「辞めたい」と感じたとき、その気持ちを正直に言えない。そんな“逃げ道すら塞がれた場所”で追い詰められている人たちが今、退職代行という手段に助けを求めているのです。
ここからは、「なぜ今、管理職が退職代行を使うようになったのか?」という疑問に対して、実際の事例と背景を交えながら深掘りしていきます。
上司という肩書きがもはや“守ってくれるもの”ではなく、“逃げ道を塞ぐ足かせ”になっている現実に向き合ってみましょう。
「辞めたい」と声に出せない管理職が増えている
一般的に部下よりも経験や権限を持ち、職場のなかでも“発言権がある”とされる管理職。
しかし実際にはそのポジションにいるがゆえに「辞めたい」と言い出しにくくなっている上司が急増しています。矛盾しているように見えて、これは現在の企業構造やマネジメントスタイルの歪みが露呈している象徴的な現象です。
管理職の多くが辞めたいと思っても、その一言が“裏切り”や“無責任”と見なされてしまう構造に苦しんでいます。
上司であるがゆえに「逃げる自由」が封じられてしまっているのです。部下には“辞める自由”があるのに、自分にはない。そんな理不尽な構図の中で、退職代行という手段に手を伸ばす管理職が増えているのは、ある意味で必然なのかもしれません。
このように、「上司=強い人」という前提が崩れた今、退職代行を使うことは、決して特殊なことではありません。むしろ、それだけ追い詰められている管理職がいるという見過ごせないサインなのです。
退職代行は他人事ではない事態に突入している

「退職代行なんて、自分には関係ない」「使うのは若手やメンタルが弱い人だろう」——そんな風に考えていた管理職がいざ自分の身にふりかかると、一番最初にその考えを覆されます。
今、退職代行は一部の人の“逃げ道”ではなく、あらゆる立場の人の“最終手段”として、現実に根付いてきているのです。
特に注目すべきなのは、これが単なる感情的な衝動ではなく、“理性的な判断”として利用され始めている点です。
上司という立場にある人間が自分の退職手続きを進めることによって、部下や組織に無用な混乱を与えないようにと考え、あえて退職代行を選ぶケースも出てきています。
たとえば、管理職マネージャーのAさんは「辞めたい」と伝えた途端に、社長や役員から怒鳴られ、説得され、結局辞める話は立ち消えになったそうです。
その後も数ヶ月にわたり引き止めが続き、ついに精神的に限界を迎え、退職代行を利用してようやく辞職を実現しました。彼は後に、「最初から退職代行を使えばよかった」と話していました。
退職代行はもはや“逃げ”ではありません。
それは、組織や自分の人生を守るための“現実的な判断”であり、今の働き方の中で必要とされている“選択肢”になりつつあります。
上司という立場にある人でさえ、そう言わざるを得ない状況になっている。だからこそ、退職代行の存在を“他人事”として見ること自体が、もはや時代錯誤になりつつあるのです。
どんな職場環境が退職代行を使われる傾向が多いのか
では実際、どんな管理職が退職代行を利用しているのでしょうか?
その傾向を見ていくと、特定の業種や企業規模で顕著なパターンが浮かび上がってきます。特に多いのが、かなりハードワークの店舗の雇われ店長や事業の営業責任者など、“現場も見るし数字も追う”いわゆる「プレイングマネージャー型の上司」です。
これらのポジションに共通するのは「業務量の過多」と「権限の不明確さ」です。
現場では常にスタッフ不足を補い、自分も働きながら人員管理をしなければならず、さらに本部からは売上や数字で厳しいプレッシャーをかけられる。
しかも、人を増やす裁量はなく、経営者には意見を通せない。板挟みにされてしまい出口のない状態に置かれた上司が最後に頼るのが退職代行です。
たとえば、とある店舗で働いていた30代男性店長は週6勤務、1日12時間労働が続いた末、「限界です」と本部に訴えました(管理職のため残業制限がなかったそうです)。
しかし返ってきたのは「代わりがいない」「今辞めたら責任問題になる」といった言葉ばかり。最終的に彼は退職代行を使い、業務報告の途中で姿を消すように退職しました。
こうした事例からもわかる通り、退職代行の利用者は決して「逃げたいだけ」の人ではありません。むしろ、ギリギリまで責任を全うしようとした“まじめな上司”が、最終手段として選んでいるのです。「辞めたい」と思ったとき、それを正面から言えない空気こそが、今の働く現場の“リアル”なのです。
次章ではこうした現象の裏にある「管理職の孤独と責任の構造」についてさらに深掘りし、なぜ彼らがここまで追い詰められてしまうのかを考察していきます。
管理職が退職代行を使う理由・背景とは
これまで「退職代行を使うのは若手社員や職場に馴染めなかった人」という印象が強かったかもしれません。
しかし今、肩書きに「課長」「店長」「マネージャー」などがつく、いわゆる“上司”の立場にある人々が、このサービスを選ぶようになっています。それも、少数の特殊な例ではなく、業種を問わずさまざまな企業現場で広がっているのが実情です。
なぜ、責任ある立場に就いている管理職が「辞めたい」と言えなくなり、退職代行という第三者の力を借りることになるのか? それは単なる精神的な弱さではなく、明確な“構造的な理由”があるからです。
この章では、現代の職場環境のなかで、管理職が抱える矛盾とストレスの正体をひもときます。退職代行という選択の裏にある、“普通に辞められない理由”を見ていくことで、組織が見落としている課題が浮き彫りになります。
上からのプレッシャーと下からの突き上げの板挟み
「数字を出せ」「ミスは許すな」「なんとかしろ」――経営層や役員から突きつけられる指示は、日に日に厳しさを増しています。一方で、現場では部下たちが働き方や人間関係、メンタル不調などの課題を抱えていて、彼らの不満や要望を受け止めるのもまた上司の役目です。
この「上からの圧」と「下からの不満」の板挟みになっているのが、まさに管理職です。
どちらにも顔を立てながら、自分の感情や限界を押し殺す日々。結果として、誰にも弱音を吐けず、最後に「もう無理」となる。それが、退職代行を選ぶ管理職の多くが抱えるリアルな背景です。
特に中間管理職は「指示を受ける側」と「命令を出す側」の両方の役割を担っているため、会社の“クッション”のような存在にされがちです。衝突の緩衝材として消耗し続けるうちに、自分の意思で辞めることすら難しくなる。そこに、「自分では辞められない」という構造的な問題が根付いているのです。
退職代行はそうした板挟み状態から脱する“最後の選択肢”として選ばれています。管理職だからこそ、逃げ道がない。そういった感情を無意識的・意識的に水面下で抱えている管理職の方も一定数いるのが現状です。
無限残業、休日対応、終わらない会議と業務など管理職ならではの事情
管理職は普通の社員と異なり残業代が出ない企業が多いです(一部の企業では深夜22時を超えた分は管理職でも残業代が支給されるケースがありますが、多くの企業では見込み残業として加算されているので、基本は残業代は出ません)。
定時を過ぎてもメールが飛び交い、土日でもチャットが鳴る。
会議資料は自分で作成し、部下の報告にも目を通す。そして月曜の朝には上層部との会議が待っている。こうした“終わらない仕事”に押しつぶされ、心身を削られていく管理職が後を絶ちません。
とりわけ問題なのは「残業しても残業代が出ない」「代休が取れない」「誰も代わりがいない」といった、制度面の不備と組織の無関心です。現場では「マネージャーなんだから仕方ない」という空気があり、それが“限界突破”の状態を常態化させています。
あるチェーン店で働いていたエリアマネージャーは「毎週7日間、朝8時から夜11時までスマホを手放せなかった」と言います。
自宅にいても店からの連絡が止まず、休日出勤も暗黙の了解。そんな生活を2年続けた末に、彼は退職代行で辞表を出しました。「自分で辞めると言ったら、罪悪感で押しつぶされそうだった」と語るその言葉が、全てを物語っています。
“終わらない仕事”の中で、「辞めたい」と声をあげる余裕さえ無くなってしまうような状況が退職代行という選択肢になる1つの理由です。
「管理職=強い人間」の幻想が苦しめる
「上司なんだから強くあれ」「部下の前で弱さを見せるな」―こうした幻想に縛られ、自分を追い詰めてしまう管理職は少なくありません。
昭和〜平成初期にかけて定着した“強いリーダー像”がいまだに現場の空気に根強く残っており、それが上司自身の限界認識を曇らせています。
「しんどい」と思っていても、「自分は管理職だから」「ここで投げ出したら終わりだ」と自分に言い聞かせてしまう。
そして気づけば、精神的にも身体的にも限界を迎え「もう誰かに代わりに言ってもらわないと無理だ」となる。こうして選ばれるのが退職代行という選択肢です。
辞めたいと思ったときに、素直に「辞めたい」と言える職場こそが、健全な組織です。
実際にあった管理職が使う退職代行の事例
「上司だから大丈夫」「管理職なら乗り越えられる」―そんな先入観が、現代の職場で多くの苦しみを見えにくくしています。しかし実際には、責任ある立場に就いたからこそ、誰にも言えず、孤独に耐え、最終的に退職代行という選択をする管理職が確かに存在しています。これは一部の極端な例ではなく、“どこの会社にも起こりうること”です。
ここでは、実際に退職代行を利用して会社を去った管理職のリアルな体験を紹介します。それぞれのケースには、追い詰められる理由がはっきりとあり、同じ立場の人にとって他人事ではありません。上司という立場が、時には“逃げ道を失わせる鎧”となる現実を、ひとつずつ紐解いていきます。
責任が重すぎた…退職代行を使った管理職たちの本音
上司という立場は、時に「責任」という名の鎖で縛られます。
チームをまとめる役割、数字を出す重圧、部下の育成、トラブル対応、そして上層部からの期待。そのすべてを背負わされた結果、限界を迎える管理職は後を絶ちません。問題は、彼らが「もう辞めたい」と思った瞬間でさえ、簡単に逃げられない構造にあるということです。
だからこそ今、退職代行という選択肢に救いを求める管理職が増えているのです。部下から見れば“強く見える存在”であるはずの上司が、「辞めたい」と言えず、最後は誰にも告げずに会社を去っていく。その背景には、言葉にできないほどの葛藤と孤独がありました。
限界まで我慢したが、もう無理だった ― 店舗オーナーからのハラスメント
「最初は夢だったんです。自分の店を任されることが」――そう語ってくれたのは、飲食店の元店長。
アルバイトから叩き上げで副店長、店長へと昇進し、オーナーから「店は任せたぞ」と言われたときは、本気で嬉しかったそうです。
しかし、その言葉の裏にあったのは「何があっても売上を死守しろ」「人が足りなければ自分で補え」という無言の圧力でした。
人手不足の中で週7勤務、1日14時間労働が当たり前になってしまい休日に店の電話が鳴れば出ないと叱責。LINEでは深夜に「明日のキャンペーン、売上10万円いかなかったら責任取れよ」と書かれたこともあったそうです。
こうしたハラスメントが積み重なっても、部下の前では装いをしなければならない。誰かが辞めれば、責任は全部自分に返ってくる。「上司(店長)だから仕方ない」と飲み込んできたが、ある日ふと「これ、もう無理だ」と限界を超えました。
「辞めたい」とオーナーに言う勇気は出なかった。これまでの関係性、投げかけられるだろう怒声、それを想像しただけで心が固まってしまったそうです。そして最後は退職代行を通じて、関係を一切絶つ形で退職。その後、一切の連絡も取っていないといいます。
退職代行は管理職にとっても“自分を守る“対応策と感じさせる事例です。
家庭も壊れかけた。逃げるしかなかった ― 一切休みが取れない会社
「朝起きると、妻と子どもの顔を見るのが怖くなったんです」――都内の中小企業で営業マネージャーをしていた30代男性が語りました。
人手不足の部署で部下の離職が続く中、営業ノルマは減らず、自分の仕事も誰にも渡せない。結果、休日出勤、持ち帰り残業、深夜の緊急対応は常態化。
「辞めたい」と思いながらも、家族を養う責任があり、簡単に動けなかった。
何より、「上司なのに音を上げるなんて情けない」と自分を責めてしまっていたそうです。しかし、家に帰れず家事や育児にも参加できないため家庭の空気は日に日に悪くなり、妻からは「もう少し家にいてほしい」と何度も言われたといいます。
ある日、小学校に入学したばかりの娘が「パパ、今度の授業参観は来られる?」と聞いてきたとき、「無理かも」と答えた瞬間、子どもが何も言わずに目をそらした。その光景がどうしても忘れられず、「もう無理だ」と確信。そこから数日後、退職代行に連絡を入れました。
「自分で辞めるって言えなかったことは情けない。でも、あのとき辞めなかったら、家庭は完全に壊れていたと思う」と語りました。
部下のメンタルケアと自分の限界の板挟み ― 求められる高い成果
大手IT企業のプロジェクトマネージャーとして働いていた40代の管理職は華やかなキャリアの裏で、常に“二重の責任”に苦しんでいました。プロジェクトの遅延リスクを避けるための綿密な管理業務と若手メンバーのメンタルサポート。この両立が年々、苦しくなっていったと言います。
特に問題だったのは部下の心の健康を守る立場にありながら、自分のメンタルケアは誰もしてくれなかったこと。
「上司だからこそ、弱音を吐けなかった」と何度も感じたそうです。
社内ではプロジェクトの成功と若手育成の両方が評価項目になっており、「成果も人材も、全部あなたの責任」という空気が漂っていました。
ある日、信頼していた部下が突然休職に入り、その対応に追われるなか、自分自身の体調も急激に悪化。「このままだと、私も倒れる」と感じ、退職を決意。しかし、辞意を伝えると、「あなたが辞めたら誰がこのチームを回すの?」と上司に詰め寄られたといいます。
その言葉が決定打となり、自分で退職を切り出すのは無理だと判断し思わず退職代行を利用。その後は一度も社内とやりとりせずに、完全に職場と距離を置いたそうです(弁護士を通じて引き継ぎ自体は実施)。
「上司だからといって、すべてを抱える必要はない。でも、会社はそう思ってなかった」と語る彼女の体験は成果と人材の両面で期待されすぎる“上司の板挟み地獄”のリアルを象徴しています。
こうした管理職の実態を受けて、なぜ企業が退職代行という手段を必要とされるまでの構造を生んでしまったのか、背景にある組織的課題について深掘りしていきます。
退職代行は単なる逃避ではなく、時代が生み出した“警告”でもあるのです。
誰にも相談できず、深夜に退職代行を検索した30代係長
「30代にもなって、まさかネットで“退職代行 上司”って検索する日が来るとは思いませんでした」―そう語ったのは、関東の中規模メーカーで係長職を務めていた男性です。
順調に昇進もして、部下からの信頼も厚かったものの、近年は組織改編で業務が激増して社長や役員などが一新。
新しい上層部からのプレッシャーがキツく「気づけば常に怒られてばかりだった」と言いこの環境の変化に体とメンタルが着いてこなかったといいます。
しかし「辞めたい」と口にしたことは一度もなかったそうです。
部下に動揺を与えたくなかったし、何より「情けない」と思ってしまったから。
だが、ある日家に帰っても食事が喉を通らず、朝起きられなくなり「これ、もう無理だ」と悟ったそうです。
その夜、布団の中でスマートフォンを握りしめながら「退職代行 管理職 体験談」で検索し、自分だけじゃないと気づいた瞬間、涙が出たといいます。
退職の連絡を代行業者に一任し、上司にも、部下にも、直接顔を合わせることなく退職が完了。「自分から何も言えなかったけど、それでも辞められてよかった」と、現在はまったく別の業界で再出発しています。
この事例は“上司だから我慢しなければならない”という無言の圧力がどれほど人を追い詰めるかを如実に物語っています。退職代行はそうした「声を出せなかった人たち」の切実な味方になっているのです。
新人部下とのトラブルからうつ状態になった中間管理職
「部下とのトラブルが、こんなにも自分を壊すなんて思いもしませんでした」―これは、大手企業で課長補佐を務めていた30代男性の言葉です。
彼は新人研修の指導役として新入社員数名を担当していました。真面目で面倒見の良いタイプだった彼ですが、ある新人とのトラブルがきっかけで心身ともに限界を迎えてしまったのです。
新人のひとりが「パワハラを受けた」と社内窓口に訴え、事実確認が始まりました。彼は「強く言ったつもりはなかった」と話しますが、会議中の指摘の仕方やメールの文面が“威圧的”と受け取られていたようで、会社側も一応の調査対応に動きました。
この間、彼は社内で“グレー扱い”のまま放置され、周囲の目が冷たくなるのを感じながら出社を続けていました。「誰も自分の話を聞いてくれなかった。悪者にされて終わった」と振り返り社内の掲示板(ポータルサイト)にも懲戒(出勤停止3日間)として名前が載りました。体調不良で休職した後、「もう戻れない」と思い、退職代行に連絡。上司にも事情を話すことなく、静かに職場を去りました。
うつ状態にまで追い込まれたこのケースは指導とパワハラの境界があいまいなまま、管理職が責任を一手に引き受けた結果です。
なぜ今、管理職の「辞めたい」が表面化しているのか
「上司が退職代行を使って辞めた」-数年前なら信じられなかったような事態が今ではもはや驚かれなくなりつつあります。
これまでは表に出てこなかった管理職の本音、「辞めたい」が最近になって急激に表面化してきています。
その背景には働き方や価値観の変化だけでなく、企業や社会が抱える構造的な問題が密接に絡んでいます。
上司という役割はこれまで“耐えること”や“我慢すること”が前提とされてきました。
しかしその我慢が限界を迎えついに声として、そして退職という行動として現れてきているのです。
ここからはなぜ今このタイミングで管理職が「辞めたい」と表明するようになったのか、その4つの理由を順に解説していきます。
人材不足とリーダー任せの体制が限界に来ている
人手不足は今やどの業界でも深刻な問題ですが、その皺寄せを最も強く受けているのが現場の管理職です。
新卒の育成、中堅層の流出、即戦力人材の獲得難などの状況下で「誰かがやらなければならない」という役割の多くが上司に集中しているのが実情です。
特に中小企業や店舗型ビジネスでは人員計画や採用が後手に回り、結果として「人が足りないなら管理職が動け」という安易な判断が常態化しています。
しかも、それに対する適正な評価やサポートがほとんどない。業務量も責任も膨れ上がる一方で管理職は孤立し、「辞めたい」と思ってもその一言が許されない空気に縛られてしまいます。
このような体制のままでは管理職の疲弊は止まらず、最終的に退職やメンタル不調に直結する可能性が高いです。今や“人材不足”そのものよりも、“リーダー依存型の組織構造”こそが限界に達しています。
昭和的なマネジメントと令和の働き方のズレ
「仕事は背中で語れ」「苦労して育て」「24時間戦えますか?」昭和〜平成初期に主流だったこうした価値観は今の働き手にとってはまったく響きません。
にもかかわらず、管理職にはいまだにこの“古いマネジメント”が求められる場面が多く残っています。
一方で、令和の働き方は「効率重視」「成果は平等に評価」「ワークライフバランスを最優先」にシフトしており、部下との温度差に苦しむ上司が急増しています。
「部下は定時に帰るのに、上司の私はそのあと全部フォローしている」「昔なら“当然”だったことが、今はハラスメントになる」。そんな現場の声が日々積み上がり、やがて限界を超えるのです。
この“マネジメントの世代ギャップ”が上司を「辞めたい」と思わせる要因のひとつです。
組織が変わらなければ、管理職がどれだけ努力しても報われず、むしろ摩擦の火種となってしまう。だからこそ、今こそ企業はマネジメントの再教育と再設計を迫られているのです。
今後も管理職を希望する人数は減る予測
実際、マネジメントポジションを「やりたくない」と公言する若手社員は年々増えています。
理由は明確で、「責任が重すぎる割に見返りが少ない」「プライベートが削られる」「部下や上司との板挟みになりたくない」といった現実的なリスクが、若い世代に伝わっているからです。
管理職というキャリアの魅力が失われている今、企業が取るべきなのは、「責任」だけを押し付ける構造からの脱却です。
誰もが「自分は辞められない」と思っている職場は遅かれ早かれ崩れます。だからこそ、上司の「辞めたい」という声にもっと早く、もっと正面から向き合うべきなのです。
外部企業と連携して管理職の役割を分散(上司代行)する時代が来ている
これからの組織に必要となりうるのは「上司がすべてを抱え込まない」体制の構築です。
特に注目されているの、“上司代行”や“マネジメントアウトソーシング”といった、管理職機能の外部委託です。これにより、管理職の心理的・業務的負担を軽減することに加えて、外部の新しいナレッジを加えることでプラスの成果も創出します。
たとえば、定期的な1on1ミーティングやキャリア面談を外部のファシリテーターが担うことで、部下との関係構築やフィードバックの質が上がり、上司本人は本来すべき業務に集中できるようになります。
また、第三者が介入することで、部下が本音を話しやすくなり、早期にトラブルの芽を摘むことも可能になります。
このような「役割の分散」は決して“責任放棄”などではなく、むしろ現代の多様な働き方に対応するための“柔軟な経営判断”となります。
今後ますます、上司代行という手段は“組織のリスク管理”や成果向上のひとつとして定着していくことが予想されます。
退職代行を使わせないために会社ができる管理職のサポートとは
退職代行を使って突然会社を去る管理職が増えつつある今、その背景には“声を上げる前に折れてしまった”という深刻なサインがあります。
本来であれば、管理職こそが職場の要であり、部下を支える立場であるはずです。
しかし、現実にはその上司自身が追い詰められ、限界の先で誰にも相談できず、最後に選ぶのが退職代行という選択肢です。
これは管理職本人だけの問題ではありません。
むしろ、企業側が“気づけなかった”“支えきれなかった”という構造の問題として、真剣に受け止めなければならない課題です。上司が辞めるときに退職代行を使うというのは、企業にとって最大級の「信頼喪失」の証でもあります。
だからこそ、必要なのは「辞めさせない仕組み」ではなく「辞めたくなる前に支える仕組み」です。ここでは、管理職が限界を迎える前に、会社としてどのようなサポート体制を築くべきか、具体的に3つの方向性から解説していきます。
心身の負荷に気づく社内チェック体制の整備
管理職は「弱音を吐かない」「自分の体調を後回しにする」といった“自己犠牲型”の働き方に陥りやすいポジションです。
だからこそ、自分の限界に気づけない、あるいは気づいても我慢してしまう。そこに組織が気づけなければ、突然の退職という最悪の形でしか異変が表れないことになります。
まず企業として必要なのは、「異変に気づける仕組み」をつくることです。
たとえば、勤怠データから連日の長時間残業や深夜対応がないかを自動で抽出する。あるいは、1on1や自己評価シートに“負担感”や“業務過多”に関する設問を加えることで、上司自身が主観的に気づくきっかけを与える。こうした予兆の検知を怠れば、手遅れになります。
さらに、直属の上司が常にチェックするのではなく、第三者的な目線を持つ「管理職支援チーム」が定期的にコンディションを把握する仕組みが有効です。
管理職の心身の不調は放置すれば組織全体に波及する可能性が高いです。その前に手を打てるかが、退職代行という事態を防ぐ最初の分岐点になるのです。
相談できる外部カウンセリングや社内窓口の設置
多くの管理職が口をそろえて言うのは「社内で相談できる人がいなかった」という言葉です。
特に部下に弱さを見せられない、上司には評価が気になって本音を話せない、同僚には競争意識がある。そうした“孤立”の構造が、管理職を追い詰めていきます。
そのため、社内に第三者的な立場で話を聞いてくれる相談窓口を設けることは非常に重要です。EAP(従業員支援プログラム)のような外部カウンセリングサービスと連携しメンタルサポートやキャリア相談を安心して行える仕組みを整えるだけでも、心理的な負担は大きく軽減されます。
加えて、社内でも「ハラスメント窓口」ではなく、「上司の悩み相談窓口」といったネーミングで独立した相談ルートを設けることで、“相談しても大丈夫”という安心感を与えることができます。
管理職であっても、仕事や人間関係に悩みます。むしろその悩みの質と量は部下以上に深いことも多いのです。
退職代行を使うという極端な選択に至る前に「誰かと話せる」「味方がいる」と思える仕組みをつくること。
それこそが企業が最も早く手を打つべきサポートなのです。
プレイヤー業務とマネジメントの分離を進める仕組みを作る
多くの管理職が心身を壊す要因のひとつに「プレイヤー」と「マネージャー」の業務を同時にこなさなければならない“プレイングマネージャー構造”があります。
日中は部下の進捗を見て夜は自分のノルマを片づける。休日はクレーム対応とシフト調整。これでは、いつか限界を迎えるのは当然です。
本来、マネジメントは「人と組織を育てる」ために集中すべき役割です。それにもかかわらず、現場で手を動かし続けながら、部下の評価や育成、会議準備まで担うことを現場の管理職に全て求めることには限界があるので例えば、業務管理や報告業務をバックオフィス部門に移す、プロジェクトごとにサブリーダーを置く、RPAやAIツールを導入して単純作業を自動化するなど、物理的な業務負荷の軽減を見直すべきです。
また「管理職になったら現場を離れるのが当然」という文化を作ることで、若手社員自身がプレイヤーとして現場を引っ張っていくという意識の醸成や管理職になる人自身も「マネジメントに専念」する体制を目指せる環境も整います。
ここで上げた事例や対策はあくまで一例ではありますが、ご自身の会社の現状を変えるきっかけになれば幸いです。