本記事ではデジタルマーケティングのインハウス化(内製化)の失敗例をご紹介します。
「失敗例?興味ないわ」「なんで成功事例教えてくれないねん」と思う方も多いと思いますが、失敗例とはいわば「しくじり先生」です。
つまり進め方や押さえるべきポイントを押さえないと同じ失敗をする確率が非常に高くなるからです。
逆に言えば「失敗事例を知っていれば、同じ失敗をする確率を減らして成功確率を上げることができる」のです。
なので本記事はこれから取り組もうとする方にとって失敗を回避するために読んでいただきたい記事です。
また本記事では、インハウス化(内製化)の効果や適した企業、失敗の原因と事例、そして成功への対策について詳しく解説します。
そもそもデジタルマーケティングのインハウス化(内製化)とは
デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)は、代理店などに頼らず自社内でマーケティング活動を完結(あるいは一部のマーケティング業務を実施)することを指しています。
多くの企業にとってコスト削減やノウハウの蓄積といった魅力的なメリットがあります。しかし、実際には多くの企業がこの取り組みに失敗しています。
どんな効果があるのか
デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)には実は多くの効果があり、ここ2~3年でトレンドとなっていて多くの企業が取り組み始めています。
第一に、自社内でノウハウが蓄積され、長期的な視点での戦略立案が可能になります。これは、外部の代理店に依存せずに自社の方向性を確立するために非常に重要です。
また、外部に依頼する場合と比べてコスト削減が期待できる点も大きなメリットです。企業にもよりけりですが、広告費用を月間で300万円以上使っている企業は大幅な代理店マージンの削減が可能です。
コスト削減やノウハウもですが自社の商品やサービスを深く理解した社員がマーケティングを担当することで、より的確なターゲティングやメッセージの発信が可能となります。つまりアクションの数やスピードが増してより早いPDCAが回せるのでより成果が出やすくなります。
どんな会社に向いているのか
結論を言えば、どんな企業でもインハウス化(内製化)は向いています。逆に言えばインハウス化をできない企業はありません(「うちの会社はできないよ」と多くの企業が口にしますが、たいていできない理由を自分たちで作って取り組まないだけです)。
インハウス化(内製化)が特に向いているのは、デジタルマーケティングに対する理解と強い想いがある企業です。逆に言えば「想い」だけあればできます。
例えば、自社のブランドや市場に対する深い理解が求められる企業や、迅速な対応が求められるスタートアップ企業にとって、インハウス化(内製化)は効果的です。なぜなら商品やターゲットとなるユーザーを理解している人材は社内にいるので、あとはマーケティングのアプローチ方法を自分たちで考えて実行できるようになればいいだけです。
マーケティングの知識ゼロでもできるの?
もちろん可能です。マーケティングの知識ゼロからのインハウス化(内製化)は簡単ではありませんが、全然不可能ではありません。
これまで学校の先生だった人や銀行の事務職だった方、パートの女性もマーケターへとジョブチェンジをしてPDCAを自分で回せるようになっています。(プロストイック支援事例より抜粋)
初めて取り組む企業にとっては、まず外部の専門家や支援会社と協力して、基礎的な知識やスキルを学ぶことが重要です。
段階的に社員のスキルを向上させることで、徐々にインハウス化(内製化)を進めることができます。また、デジタルマーケティングの基本から学び、実践を積み重ねることで、自信を持って取り組むことができるようになります。
インハウス化せずデジタルマーケティング業務を完全にアウトソースするのはとても危険
インハウス化(内製化)について少し興味や理解が湧いてきましたでしょうか。
インハウス化(内製化)の失敗例をお伝えする前に、インハウス化(内製化)せず外部の代理店・ベンダーへ完全にアウトソースしている状態こそ逆に危険ということについてお話します。
デジタルマーケティングを完全にアウトソースすることは、一見便利で効果的に思えるかもしれません。
しかし、それには大きなリスクが伴います。コストの問題やノウハウの流出、品質のばらつきなど、注意すべき点が多くあります。
コストが永続的に発生
まずはコスト観点です。代理店にデジタルマーケティングを依頼する場合、当然ながらそのサービスに対する費用が発生します。
このコストは、プロジェクトが続く限り永続的に発生し、企業の財務負担となります。また、予期せぬ追加費用や、契約内容の変更に伴うコストの増加なども考えられ、結果として企業の利益を圧迫するリスクがあります。
ノウハウが全て流出
これは定量的に図りにくいので影響度を軽視しがちですが、アウトソースにするとノウハウはすべて代理店側に流出します。(ノウハウは提供しますと言っている会社でもブラックボックス化するケースが非常に多いです)
代理店に依頼すると、企業のマーケティング戦略やノウハウが外部に流出する危険性があります。
特に競争の激しい業界では、他社に対する優位性を失う可能性もあります。インハウス化(内製化)を目指す企業にとって、ノウハウの内製化は重要な課題であり、外部に依存しすぎることは長期的な成長を阻害する要因となります。
代理店の担当者のレベルで品質がブレる
代理店の担当者のスキルや経験によって、提供されるサービスの品質が大きく左右されます。
優秀な担当者に当たれば良いですが、逆に経験の浅い担当者に当たると、期待していた効果が得られないこともあります。担当者の変更が頻繁に行われる場合、プロジェクトの連続性が失われ、成果にムラが出るリスクもあります。(実際問題多くの代理店ではこの担当者変更によりかなり成果に影響が出ています)
代理店の言うことが必ずしも正解ではないが、それを客観的に評価することができない
代理店の提案が必ずしも企業にとって最適な解決策であるとは限りません。
しかし、その内容を客観的に評価するための知識や視点が不足していると、適切な判断ができずに誤った方向に進んでしまうことがあります。
自社内にデジタルマーケティングの知識を持つ担当者がいないと、代理店の言いなりになってしまうリスクが高まります。
なぜ多くの会社はデジタルマーケティングの内製化ができないのか
アウトソースに頼りすぎることで莫大な損失を事業会社(広告主)側が被っていることはご理解いただけたかと思います。
一方、デジタルマーケティングの内製化を試みる企業は多いですが、その多くが途中で挫折してしまいます。その理由は様々ですが、特に人材不足やノウハウの欠如、進め方の不明確さが挙げられます。
人材不足
まずはインハウス化(内製化)ができない一番の理由を上げます。それはデジタルマーケティングの専門知識を持つ人材は需要が高く、確保が難しい状況です。
特に中小企業にとっては、予算やリソースの制約から優秀なマーケターを雇用するのは容易ではありません。未経験や経験値の浅い若手はまだしも、舵取りできる人材やマーケティングの上流設計をできる人材はそう多くはありません。
その結果、適切な人材がいないために内製化が進まず、効果的なマーケティング施策を実施することができないケースが多いのです。
育成ができない
人材が足りていないのであれば若手を育ててマーケターにしようと考える方も多いと思います。アプローチの仕方としては間違っておりません。しかし育成と一言で言っても非常に難しいです。
まず誰が育成をするのか、育つまでにどのくらいかかるのか、途中で退職するリスクは、育成のコストはどうするのかなど課題が多くあります。ましては自社内だけで育成するのも難しいし、外部の講義だけを聞いて大学の講座形式での座学もかなり時間はかかり、実践のマーケティングとはかけ離れている事が多いので実務では効果が薄い事が多いです。
ノウハウがない
デジタルマーケティングの成功には、豊富なノウハウが必要です。
しかし、多くの企業はそのノウハウを持っておらず、どこから始めて良いのか分からない状況に陥っています。
例えば数値を観るノウハウとしてGoogleの広告管理画面の数値とGA4の数値って乖離しているけどどちらを見ればいいの?ググればすぐに出てくる内容ではありますが、以外と知らない方も多いし、どうすればいいか詰まってしまう方も多いです。
また金融系のマーケティング手法ってアフィリエイトが有効って聞いたけどそれだけやってれば成果出るんでしょ?(でません)という問いに対しても正確な回答ができますか?できる方はノウハウを持っている方でできない方はノウハウを持っていないと判別できます。
実績のあるマーケティング手法や最新のトレンドを把握し、それを効果的に活用するための知識が不足していると、せっかくのインハウス化(内製化)の取り組みも空回りしてしまい、ノウハウというのは資産であり財産なので非常に大切です・
進め方がわからない
デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)には、明確な計画と段取りが必要です。
しかし、多くの企業はどのように進めていけば良いのか、その具体的なプロセスがわからずに困っています。
初期段階での適切な戦略立案や目標設定が欠如していると、プロジェクトが迷走し、結果として失敗に終わることが多いのです。
デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)の失敗事例
ではここからいよいよデジタルマーケティングのインハウス化(内製化)の失敗例を見ていきましょう。
インハウス化(内製化)を目指す企業が直面する典型的な失敗事例をいくつか紹介します。これらの事例を踏まえ、同じ過ちを繰り返さないようにすることが重要です。
既存社員にデジタルマーケティングの知識がないのに1ヶ月後に代理店との契約を打ち切り
まずは過去直面した中で最も衝撃的だった失敗例からお話しします。
ある企業は、コスト削減のために約1ヶ月程度しか猶予を設けず代理店との契約を打ち切り、インハウス化(内製化)を進めようとしました。しかし、既存の社員にはデジタルマーケティングの知識がほとんどなく、効果的な施策を実行することができませんでした。業務の引き継ぎもままならずアカウントの移管やレポートなどを共有するのみで、その結果広告のマージンや費用は減少したものの、売上も大幅に減少しました。
実はこの決断は会社の社長の独断とトップダウンの命令で決めてしまったもので現場の社員は理解も追いついておらず、取り組もうとしたが結局進め方も分からず既存の業務で忙しく知識をインプットする余裕もない状況でした。
デジタル業務の運用が回らないので成果もどんどん落ちていくと同時に上層部からの圧力も日に日に増していきどんどんストレス負荷が増え、結果として多くの退職者を出してしまった企業がいました。
コストを削減することにフォーカスしすぎて成果がおざなりに
ある企業は、コスト削減を図るために代理店との契約を打ち切り、インハウス化(内製化)を進める決断をしました。しかし、問題はその後すぐに明らかになりました。
既存の社員にはデジタルマーケティングの知識がほとんどなく、効果的な施策を実行するスキルもありませんでした。社員の人数も少なく既存業務と平行してマーケティング業務を実施している状況でした。その結果、広告費用は削減できたものの、売上も大幅に減少しました。
しかし結局業務が回らず最終的には再び代理店に依頼することになり、二度手間となってしまいました。この事例は、コストを削減することにフォーカスを当てすぎています。
一つ目の失敗例と似ていますが、決裁者が現場を理解せずコスト削減を社長から言われ、部長がコストカットを判断して実行された結果です。既存代理店にもマージンの削減を依頼したようですがそもそも他社よりも低いマージンでかなりシビアな成果を求められていたようで、代理店側もこれ以上支援できないと判断して撤退をしてしまったようです。
その結果、引き継ぎなどもままならずコストはカットできたが成果がどんどん落ちていき最悪の事態を招いてしまったようです。
代理店のコストをカットするのはすぐにできそうと現場を理解していない方ほど思いがちですが、裏側では細かいチューニングをきちんと実施している代理店もあり、表層上で見えている業務以外にも実は色々なことを実施しています。本当にコストに見合うかどうかはきちんとタスクレベルまで可視化して判断した方が良いことを教えてくれた失敗事例です。
現場社員との対話や意見を無視して進めたため既存の社員が次々と辞めてしまった
ある企業では、インハウス化(内製化)を進める過程で既存の社員に対する負荷が増大しました。
デジタルマーケティングの知識を持つ社員が少ないため、業務が特定の社員に集中し、ストレスが高まりました。
業務負荷は増えているのに給与や手当などはおざなりになっていて、何もリターンがなく、残業代も見込み残業で組み込まれているためほとんど手当もでませんでした。
その結果、優秀な社員が次々と辞めてしまい、プロジェクトは停滞しました。残された社員はモチベーションを失い、会社全体の士気も低下しました。
この事例は、インハウス化(内製化)を進める際には、適切な人員配置と業務負荷の分散が重要であることを示しています。単純に代理店から見えている業務を既存社員に当て込めばいいわけではありません。きちんと現場の社員と対話をして余稼働状況の確認や代理店の業務が対応できそうかを話し合います。
インハウス化(内製化)は社員の数が増えないと単純に既存社員の業務にデジタル業務が追加されるだけなので負荷が増えます。それを実行する体力と理解があるのかはきちんと確認しましょう、
インハウス専門の支援会社を通さず既存の代理店から業務内容だけを引き継いだ
ある企業は、コスト削減とスムーズな移行を目指し、インハウス化(内製化)を進める際に既存の代理店から業務内容だけを引き継ぎました。
しかし、インハウス化(内製化)をサポートする専門の支援会社を利用しなかったため、ノウハウの移行が不十分で、業務の理解が浅いまま進めることになりました。その結果、施策の効果が出ず、マーケティング戦略も一貫性を欠いたものとなりました。
この事例は、インハウス化(内製化)の過程で専門の支援を受けることの重要性を示しています。
これはどの時間軸で成果を出しつつコスト削減を実現するのかを学ばせてくれる失敗例です。
インハウス化(内製化)の支援会社を使えば当然コストはかかります。しかしインハウス化がゴールのため最終的にはコスト削減は可能です。コスト削減だけをいきなり実施しようとしても、そこに成果が伴わなければ本末転倒です。
なので最初は支援会社に業務や体制の整備をしてもらいノウハウを貯めてから既存社員へのインハウス化(内製化)を進める順番が良いのではないでしょうか。
デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)を成功させるには
ここまで失敗例を見てきて、インハウス化(内製化)といっても意外と単純な話ではないということがわかると思います。
インハウス化(内製化)を成功させるためには、計画的かつ戦略的なアプローチが必要です。以下のポイントを押さえることで、成功への道筋をつけることができます。
まずは支援会社と協力して型を作る
デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)を始める際には、まず支援会社と協力して基本的なフレームワークを作ることが重要です。
支援会社の専門知識と経験を活用することで、効率的にノウハウを吸収し、効果的なマーケティング戦略を構築することができます。これにより、社内でのスムーズな移行と継続的な成長が可能となります。
ゴールを明確にする
これがかなり大事なのですが、インハウス化(内製化)を成功させるためには、明確な目標設定が不可欠です。
短期的な目標から長期的なビジョンまで、具体的かつ現実的なゴールを設定し、それに向けての戦略を練ることが重要です。これにより、社員全員が同じ方向を向いて努力することができ、プロジェクトの成功率が高まります。
インハウス化(内製化)の形は十人十色で様々な形があります。全てのマーケティング業務を全て自社内で実施できることがインハウス化(内製化)ではありません。自分たちに合ったゴールを設定してきちんとマーケティング業務と向き合うことが大切です。
いきなり全てを自社内で完結させない
インハウス化(内製化)を進める際には、いきなり全てを自社内で完結させようとするのはリスクが高いです。
段階的に進めることが成功への鍵となります。
まずは一部の業務から始め、徐々に範囲を広げていくことで、社員のスキルアップとノウハウの蓄積を図ることができます。また、必要に応じて外部の専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えることができます。
まとめ
いかがだったでしょうか。ここまでデジタルマーケティングのインハウス化(内製化)について失敗例とその対策についてお伝えをしてきましたが、少しでもイメージが湧けば幸いです。
インハウス化(内製化)は思っている以上に単純ではなく、機微の部分で工夫をしないと結果として失敗するケースは少なくありません。