【初心者向け】デジタルインハウスマーケティング(内製化)とは(種類・失敗例・注意点)

皆さんこんにちはプロストイックの久保田です。本日はインハウスマーケティングについて解説させていただきます。

前提として弊社は「デジタル」マーケティングのインハウス化(内製化)を中心に支援しているので、デジタル施策の内製化を中心にお話しします。

インハウスマーケティングとは?

まずそもそもインハウス(In-house)とはなんでしょうか。定義や種類は様々ですが、インハウスとは一般的に外部のベンダーや代理店に委託している業務を自社内で行うことを指しています。

アウトソースの対義語にあたる言葉で日本語だと「社内の」「企業内の」を意味しています。つまりインハウスマーケティングとは「自社内でのマーケティング業務」を指しています。

多くの企業が導入したい意向があるが,,,

実はこのインハウスマーケティングは多くの企業での導入意向はあります。

理由は後ほど詳しくお話ししますが、インハウスで業務を行うことで高い代理店マージンを削減できたり、代理店とのコミュニケーションコストを削減することができます。

インハウス(内製化)の種類と違い

インハウス(内製化)という言葉を使っていますが、インハウスにも色々は種類があります。

会社によって言葉の定義が少し異なるので、本記事における言葉の定義を以下の通りにします。(資料追加)

アウトソース

アウトソースはその名の通り、外部に業務を依頼・委託する状態のことです。

代理店に広告の運用やサイト制作を依頼している状態もこのことです。

完全インハウス

次は「完全インハウス」です。これは全ての業務を自社内で完結させる体制のことを指します。

自社内にマーケターを揃えマーケティングチームを構築してスピード感を持った対応や連携などを行い業務を回す体制です。顔が見知った仲で業務を行うため無駄なコミュニケーションコストもかからずコスト面でもスピード面でも効率的な状態であることを目指した体制です。

一部インハウス

アウトソースと完全インハウス以外にも「一部インハウス」という状態もあります。これは数あるデジタルマーケティング業務において一部の業務だけ自社で行い、一部は外部にアウトソースする状態のことを指します。

例えば広告運用とSEOやサイト分析などは自社で行い、LP制作やSNSの更新だけは外部の方が安いから委託するような体制です。

全ての業務を自社で賄うことは「現時点」では不可能なのでまずはステップ1として一部の業務だけをインハウス化(内製化)している状態を指します。

デジタルマーケティングのインハウス(内製化)とは

インハウスにも色々な業務でのインハウス化があり、本記事ではデジタルマーケティングのインハウスについて詳しく解説します。デジタルマーケティングのインハウスとは主にSEOや広告運用、GA4の定常業務を代理店への委託から自社に切り替えるものになります。また施策別のインハウス化(内製化)についてもどんなタスクをインハウス化するのか詳しくみていきましょう。

SEO運用をインハウス化における種類と課題

SEO運用のインハウスにも色々な種類があります。SEOにも大きくコンテンツSEOとテクニカルSEOがあります。

コンテンツSEOにおいてはコンテンツの整備やメンテナンス、ニーズキーワードの発掘や記事のリライトなど色々な業務があります。SEOのインハウスといってもコンテンツの管理や設計を自社内で行い、記事の作成自体は外部のライターに依頼するケースもあります。

そしてテクニカルSEOは主にサイトのバックグラウンドで動いているソースコードを改善して表示速度をあげたり、googleが読み込みをしやすいようにサイト構造を簡略化することです。

そこまでメンテナンス頻度は高くないですがコーダーやシステム系を管理できる人材がいれば対応可能でしょう。基本的にSEOはスタンダードなガイドラインがあるので、まずはそこに準拠した設計と設定を行う必要があります。逆にいえばガイドラインのようなものがあるので自社内でも取り組みやすい施策となっています。

広告運用をインハウス化における種類と課題

続いては広告運用のインハウス化についてです。広告も主にデジタルの広告運用をインハウス化する前提でお話をします。広告運用のインハウスはgoogleやyahoo等のリスティング広告やバナー等のディスプレイ広告運用を自社で運用するようにすることです。

コスト面では規模によっては削減インパクトが大きいケースがあり、例えばですが、月1000万円を運用金額としてマージンが運用金額の20%とすると代理店マージンと広告費用合わせて月1,200万円が販管費となります。

しかしこれを自社で実施すると月200万円、年間で2,400万円の削減が可能になる計算です。ただ、広告運用のインハウス化はリスクとしては他の施策と比べて高い傾向にあります。

なぜなら配信の金額や内容などを間違えると配信事故に繋がる場合があるからです。なので安直に今、代理店がやっている業務をそのまま自社に移し替えるという単純なものではなく、慎重にステップを踏んで進める必要があります。

SNS運用をインハウス化における種類と課題

SNSに関してはSNS広告の運用や投稿の更新など主に2種類の業務パターンがあります。SNS広告のインハウス化の場合は広告運用と類似している部分が多いです。

投稿までの流れや運用自体はガイドラインがあるので難しいものではなく、どちらかというと管理と運用体制の整備が必須となります。投稿に関しては投稿文や投稿バナーの作成タスクも発生します。

またインスタントウィン(その場であたりはずれがわかる機能)等を使ったようなキャンペーン施策を打つ場合は外部ツールの利用は必須となるので、そのツール利用においても自社で行うことになります。

投稿頻度によってどういった体制が必要になるか見極める必要があります。

サイト・LP制作をインハウス化における種類と課題

サイト・LPの制作インハウス化(内製化)は頻度によって自社で実施するか外部にアウトソースするか二分化するケースがあります(その他制作難易度や量によっても変動)。

主なタスクとしてはサイトやLP制作の設計ディレクション(要件定義)、画像作成やトンマナ調整等のデザイン、設計ワイヤーを元にコーディングをする作業の3つです。

なのでサイト・LPの設計ディレクター、デザイナー、コーダーの3職種が必要になります。

ただ、最近ではノーコードでLP制作ができるツールが潤沢にあるので制作難易度によってはディレクターとデザイナー(あるいはディレクターのみ)を体制として組めばよい場合もあるかもしれません。

サイトやLP制作は外部にアウトソースしてしまったほうが楽なケースもありますが、アウトソースしている企業が挙げる課題が「品質が不安定」「スピードが遅い」です。

この課題のボトルネックは委託先のスキルもありますが、コミュニケーション量と質だと考えています。与件を固める際にどこまでを依頼側が行いどこまでを委託先に任せるのかを線引きができていないとこの2つの課題が発生します。

この課題は改善するケースもありますが、委託先も複数のクライアントを抱えていてなかなか貴社を優先で対応というのが難しい場合が多いです。なので、「品質の安定化」や「スピード対応」を求める場合は自社で採用・育成してインハウス化(内製化)してしまったほうが良いでしょう。

インハウスのメリット

続いてはインハウス化のメリットについて解説します。企業によって理由は様々あり享受できるリワードも異なりますが、主なメリットは以下の通りです。

コスト削減

まずインハウス化をする一番多い理由なのがこちらの「コスト削減」です。外部委託の費用がかかりすぎて、予算もあまりなく自社内で業務を回すことに舵を切る会社が多いです。実際の例を挙げると、とある企業は広告費を毎月2,000万円程度使用していました。しかしCPA(1件あたりのCV獲得単価)は上がる一方で代理店のパフォーマンスも落ちています。

コミュニケーションを取り改善の要望もだしますが、代理店も複数のクライアントを抱えているため専属で貴社をチェックすることは難しいケースが多いです。

そして月2,000万円の出稿金額で代理店マージンは20%(200万円)つまり毎月2,400万円が販管費として支出されていました。月200万円を代理店に支払うくらいならと思い、完全インハウス化(内製化)を決意。

採用や育成、マニュアルや体制整備などの準備に1年半程度かかりましたが、自社内完結で広告運用体制を整えることに成功。社内的にもコストインパクトが大きく率先して動いた社員は社内で表彰される形となりました。

ノウハウの蓄積

次はノウハウの蓄積です。代理店に全てアウトソースしていて、月次や週次のレポートのみを受け取っている状態では自社内に全くノウハウが貯まりません。

そして予算がない状況になった時、いざインハウス化するとなった時にまずどんな打ち手をすべきかさえわからない状態に陥ってしまいます。定常でマーケティングについて議論したり、考えていればPEST(外的要因)の変化にも柔軟に対応ができるかと思います。

社員の評価アップ

代理店に頼らず自社でマーケティングを行うことで新しいスキルを身につけられます。今までにないスキルを身につけるには時に苦労することもありますが、自身のキャリアアップに繋がり新しいキャリアが開ける可能性もあります。新しいスキルを身に着け成果を挙げることによって評価を上げることも可能なのではないでしょうか。

代理店とのコミュニケーションコスト

インハウス化することにより代理店とのコミュニケーションコストを削減することも可能です。もちろん月1回程度しか打ち合わせをしないケースもあると思いますが、打ち合わせの頻度が多い場合、あるいは代理店側の担当が頻繁に変わる場合はインハウス化するメリットが大きいです。

会社によりけりですが、大手の代理店になるほど半年~1年程度で担当が変わってしまうことがあります。もちろん引き継ぎもしますが、クライアント理解や商品・サービス理解に数ヶ月かかりますし、担当のスキルセットが芳しくない場合、何度も説明する必要があるなどして無駄なコミュニケーションが発生する場合があります。

自社でマーケティング業務をインハウス化することで、自社内にガイドラインやマニュアルを整備するため無駄なロスが少なく隣の席などにいて一緒に仕事をすれば密なコミュニケーションもとれます。

スピード感を持った対応

期日が近い制作物や依頼がある場合、対応できる代理店とそうでない代理店がいます。自社内にノウハウやリソース(人やツール)を確保しておくことでスピード対応が可能になります。逆に代理店に依存をしてしまっていると、どうしても期日を代理店対応可能日に合わせることになり、行いたかった施策ができず結果KGI、KPIなどの達成ができないことにも繋がりかねません。

社内プレゼンスの向上

これまで代理店に委託していた業務を自社内でインハウス化する作業は簡単ではありません。上長にあたるレイヤーの方々は安易に考えているケースが多いですが現場は混乱することが多いです。

特に今まで代理店が運用していた数値を月1回程度しか見ず、ほとんどの業務を委託していた場合はかなり大変なケースが多いです。

しかしそれを乗り越えた場合、成果となるものを大きいです。中でもインハウス化した際の削減したコストインパクトが大きい場合、社内で表彰されるケースもあるのではないでしょうか。削減したコストや大きな変革をもたらしたと社内で認知されれば自部署のプレゼンスも上がり、社内でも存在感が大きくなるのではないでしょうか。そうなると周囲からの見え方も変わり受ける恩恵も多いはずです。

インハウスのデメリット

続いてはデメリットについてです。このデメリットを享受できなければインハウス化は難しいというわけではありませんが、リスクとして対策しなくてはならないということだけ把握してもらえればと思います。

人事異動などのリスク

事業会社でインハウス化(内製化)する一番の懸念は人事異動です。

今でも部署問わず異動になる会社はあるようで、せっかく自分たちでインハウス化(内製化)しようとしても異動になってしまっては振り出しに戻ってしまいます。

近年多いのは大規模の企業でも組織横断のデジタルハブとなるような部門を社内に設立してデジタルの管理と運営を統括する人材を一箇所に集めているケースが多いです。

総合職の採用ではなく、専門職採用なので異動もなく外的な要因に左右されるリスクも少なくなってきています。

自社で情報を取りに行く必要はある

代理店がこれまで行っていた情報共有がなくなるため、自分たちで情報を取りに行く必要が出てきます。外部のセミナーや展示会に参加して最新のトレンドや他社事例などを能動的に取得しなくてはなりません。

自社でデジタルマーケティングを行う以上情報収集は必須のタスクとなります。

リソースを確保する必要がある

インハウス化(内製化)を進める上で難しいポイントの1つがリソースの確保です。

ここで言うリソースとは担当者(人)と稼働時間です。つまりでデジタル業務の担当は誰がやるのか、どういった体制で行うのか。専任で業務ができるのか、他業務と兼務の場合どのくらい時間が割けるのか。

ここを間違えると業務が立ち行かなくなり思うような成果が出ず結局は代理店を頼らざるを得ないことになります。

デジタルマーケティングでインハウス(内製化)を成功させるには(失敗ケースも)

インハウス化のメリット・デメリットを把握した上で最終的にデジタルマーケティングにおけるインハウス化(内製化)を成功させるためのポイントについて整理したいと思います。

ゴールをきちんと設定する

まずはゴール設定をきちんとすることです。基本は5W1Hに沿って考えていき、what(どの業務を)、when(いつまでに)、where(どの部署が担当して)、who(誰が管轄するのか)、how(どういった体制で)を軸に考えていきましょう。

フェーズ分けをして進める

またポイントとして全てを一気にインハウス化しようとしないことが重要です。

よくあるのが現場の業務を把握せず【とりあえず2ヶ月で一旦インハウス化進めてくれ」というオーダーが上のレイヤーから言われているという内容です。これはとてもリスクがあり成果も落ちるし、現場は混乱するし代理店との関係も崩れるワーストケースです。

2ヶ月というのが現場目線の期日であればいいのですが、たいていの場合は会社都合のことが多いです。一気に進めようとするとこれまで見えていなかったタスクとして代理店側が実施してくれていたタスクや調整もあるでしょうし、運用体制を急ピッチで整備しなくてはいけないため、タスクのぬけもれが発生するリスクもあるし最悪配信事故などを招くこともあります。

なのできちんと順序建ててフェーズごとにゴール設定をしてすすめていくことが成果を維持しつつ確実にインハウス化(内製化)を進めるポイントになります。

リソース(人や稼働時間)・体制の確保

インハウス化の重要ポイントとしてリソースの確保は最重要項目となります。つまり誰がどの業務を担当して何時間時間を割けるのか。時間を割ける方の現在のスキルセットやリテラシーはどのレベルかなど運用体制として機能するのかどうか、また機能させるにはどのくらいの時間が必要かを事前に見積る必要があります。

よくあるのが他業務と掛け持ちのケースです。業務量がそこまで多くない、あるいは柔軟に調整可能であればよいのですが、繁忙期などで片方の業務が忙しくなってしまうとデジタル業務がおろそかになり管理がままならないことになってしまいます。

デジタルマーケティングの知識やノウハウはそれほど重要ではない

最後にデジタルマーケティングをインハウス化(内製化)させるポイントとして「現在の知識レベルや業務理解はそれほど重要ではない」ということをお伝えしておきます。

知識は調べれば出てくるものが多いですし、業務も覚えてしまえばとりあえずは運用できることが多いです。

では何が最重要なのでしょうか。それは先程の項目でもお伝えしたリソース。つまり運用体制の整備です。誰がどの業務を担当してどういったサイクルでPDCAを回し成果を出していくのか、目標を達成するためのアクション立てや振り返りはいつ実施するのかなど、座組をきちんと組み立てて業務を回せるかが重要なポイントです。

よくある失敗例が「Aさんって前職で広告少しかじってたし、いけるでしょ。(Aさんは広告営業はしたことあるが運用はしたことない)」「とりあえず既存業務はこっちで少し巻き取るから再来月から頼むよ。」と上司から言われ一人で運用業務をしたもののミスや漏れが連発。結局1人で業務を回せず代理店に再度お願いをすることに。というケースです。

この失敗例はまず「とりあえずやってみて精神」「事前の体制設計がない」「順序立てて進めていない」など色々とあるのですが、まず現状のレベルに対して一人で業務を回してみてという挑戦がかなり無謀だったことです。ミスや漏れを連発しているということはチェック体制が甘かったということです。

マニュアルやドキュメントの整備があったのかもしれませんが、基本のダブルチェックが1人で業務をまわしているため体制として取れず、ミスが多く発生してしまった結果可と思います。なので現状のデジタル知識というよりミスや漏れがなるべく発生しない体制を取れているかが重要ということがこの例でより解像度が上がったかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。インハウス化(内製化)を成功に導くにはかなり大変なプロセスを辿ることもありますが、コストの削減インパクトや社員のスキルアップ、新しいキャリア形成など得られるベネフィットは多くあります。

インハウス化(内製化)のトレンドは今後も続いていくことが予想されているため、ぜひインハウス化(内製化)を専門とした支援をしているプロストイックへご相談をいただけますと幸いです。

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